第112話 嬉しい割り勘


「おめでとう! お祝いに食事でもしようよ。もちろん、僕がおごるからさ」

 シナリオライターをしている幼なじみの友人が、今度発売されるゲームのシナリオを担当しているという。こんなに嬉しい話はないと、さっそく彼に電話をかけて食事に誘った。


「ありがとう。でも本当は俺の方こそ、君にごちそうしなきゃいけないんだ」

「どうして? 僕、なにかしたっけ?」

「実はさ……」


 彼の話を聞いて僕は納得した。それなら、僕にも彼におごってもらう権利がある。

 話し合いの結果、食事代は割り勘に――つまり二人できっかり半分ずつ払うことに決めた。


「割り勘にして嬉しいのは、はじめてだよ」

「俺もだよ」

 ゲームを遊ぶのが、今から楽しみで仕方がない。

 なにしろ彼が書いたシナリオには、子どもの頃にふたりで考えた設定が使われているというのだから。


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