第90話 虹の色は何色?


 雨上がりに幼い娘と散歩へでかけると、見あげた空に大きな虹が架かっていた。


「虹の色は全部でいくつでしょう?」

「えーとねー、ひとつ!」

 幼い娘が自信満々に答える。

 私は驚いて、思わず立ち止まってしまった。


 虹の色といえば七色。だけど、国や地域によって、その数はずいぶん異なるらしい。たしかに、青色と藍色の違いは難しいし、実際に虹を見て七色すべてを見分けられるかというと、たぶん無理だろう。


 だけど、さすがに虹の色がひとつというのはおかしい。今すぐ散歩をやめて、娘を眼科に連れて行くべきだろうか。


「ほら、よく見てごらん。いろんな色があるだろう?」

「えー、ひとつだよー」

 娘は頑としてゆずらない。

 そして、空に架かかる虹を指さすと言った。

「ほら、虹色!」


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