第87話 親孝行には遅くない


「おまえは、おもちゃで遊ばない子どもだったからねえ……」

 老いた母が懐かしそうに言った。


 押し入れの奥から出てきたのは、箱いっぱいのおもちゃ。その中には昔よくテレビで見ていた、戦隊もののロボットや変身アイテムなんかもある。しかし、そのどれもが新品のままで、箱をあけた形跡さえなかった。


 母が言うとおり、俺はあまりおもちゃに興味がない子どもだった。図鑑を眺めたり、地図や地球儀を見るのが好きだったのだ。


 せっかく買ってくれたのに一度も使われることのなかった、たくさんのおもちゃたち。それを見ていると、なんだか申し訳ない気分になってくる。


 いや、ちょっと待てよ。今からでも親孝行には遅くないかもしれないな。

 調べてみると、予想以上だった。


「母さん。今度、温泉にでも行こうか」

 このおもちゃ、どうやら高く売れそうだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る