第92話 神様の言うとおり


「そっちの道には行かない方が良いぞ」

 男はその言葉に従い、道を変えた。


 いつの頃からか、不思議な声が聞こえるようになった。その声はいつもこれから起こる不幸と、それを避ける方法を教えてくれるのだ。


 はじめは疑って、その忠告を無視したこともあったが、そうするとその通りの不幸に見舞われてしまった。声に従うと不思議と何も起きない。


 不幸といっても、転んだり、落とし物をしたり、電車に乗り遅れたりと、ささいなことばかりだった。だがそれでも信じるにはじゅうぶんだった。男はその声を神様からのメッセージだと信じた。


 男は知らなかった。そのささいな不幸の先に、大きな幸運が待っていたことを。例えば、落とし物をしたことで出会うはずだった、新しい友達がいたことを。


 その声は、確かに神様の声だった。

 名前は貧乏神という。


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