第80話 素直じゃない


「お婆ちゃんが、見たい動画があるから教えて欲しいんだって」

「えー、またかよ。ったく、何度も何度もめんどくせえなあ……」

 弟は吐き捨てるようにそう言った。


 しばらくして、弟は自分のスマホを持って部屋から出てくる。私に気づかれたくないのか、足音を忍ばせて祖母の部屋へ入った。


 少し待ってから、祖母の部屋の前で聞き耳をたてた。中からはふたりの楽しそうな声が聞こえてくる。どうやら猫の動画で仲良く盛りあがっているようだ。


 私は知っている。お婆ちゃんは動画を見るくらい、本当はひとりでもできる。弟に構ってほしくて、できないフリをしているだけなのだ。そして弟も、面倒くさがっているが本当は祖母に頼られて嬉しいに違いない。

 まったく、素直じゃないんだから。


 次の日、私は編みかけの毛糸を抱えて、こっそり祖母の部屋を訪ねた。


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