第51話~第100話

第51話 普通の日々


 あー、退屈。

 彼女はなげく。


 いつものように授業を受け、

 隣の席の男子と少しだけ話をして、

 バイト先のお弁当屋さんで、常連客に愛想をふりまく。


 駅で、女性が落としたマフラーを拾って、

 路上ミュージシャンの演奏を1曲聞いて、

 友達と夜まで長電話して、

 そして今日も、もうおしまいだ。



 彼女は知らない。

 長電話した友達は、悩みを聞いてくれたことを忘れずにいて、30年後に再会して仕事を助けてくれる。


 路上ミュージシャンは、初めて立ち止まってくれた彼女の存在を心のかてに、音楽を続けて3年後にデビュー。のちにそのデビュー曲が、仕事で落ち込む彼女を励ますことになる。


 落としもののマフラーは母親の形見で、あと数年は女性の心を支える大切な品物。


 バイト先のお弁当屋には、常連客に失敗続きの新入社員がいて、彼女の笑顔に励まされて仕事を続け、後に彼が開発した薬が彼女の子どもを救うことになる。


 隣の席の男子は初恋の相手で、告白されるまであと5日。

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