第49話 適切な対策


「それは本当かね」

「はい。私も、その場にいましたので」

 とあるタクシー会社で、社長と専務が対策に追われていた。


「そりゃもう、ぐっしょりと人の座った形に濡れてまして。今どき、幽霊なんて信じられませんが、これで3人目です。ドライバーたちも大騒ぎですよ。放っておいたら、ストライキでもやりかねない勢いです」


「おはらいでもするかね?」

 乗せたはずの女性が消えて、後部シートがびっしょり濡れている。そんな有名な怪談が、現実に起きてしまったのである。


「いっそ、深夜は女性を乗せないようにするかね」

「ダメです。うっかり本物を乗車拒否したら大問題です」

「その道は通らない、というのはどうだ」

「あそこは、山を越える唯一の道なんですよ」


 そこで社長は、運転手たちと面談を行うことにした。

 その結果、騒ぎはすぐに収まった。


 後部座席用の防水シートを配布すると、約束したのである。

 車内のクリーニング代は、ドライバー負担なのだ。


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