第42話 臨機応変


「教授。次のタイトルは『日本経済・崩壊とそのシナリオ」でいいですか?」

「んー、もうちょっと緊迫感がある言葉が欲しいね。あおるような感じの」

「わかりました。もう少し考えてみます」

「いやぁ、いつも手伝ってもらっちゃって悪いねー」

「いえ、それがも助手の仕事ですから」


「しかし、いよいよ日本経済も危なくなってきたねー」

「ええ。でも、本当に崩壊したら困りますよ」

「なあに、こういう本が売れてるうちは大丈夫だよ」

「そうなんですか?」

「我々には、うまくいってる時ほど警戒して後ろ向きになり、危ない時ほどなんとかしようって前向きになる、っていう妙な習性があるからね」


「なるほど。では教授の本は、前向きにさせるための薬ってところですね」

「そうそう。それに本当に崩壊しちゃったら、こんな本、誰が買うのさ」

「でも、もし本当にそうなったら、どうします?」

「その時のために、もう『日本経済・再生のシナリオ』は書きあがってるよ」

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