第7話 海の勇者(後編)

 街角の水晶スクリーンに、勇者ユウジンの姿が映る。

 そこにはユウジンが、魔王ディープブルースと激しい戦いを行っている光景が映し出されていた。


「はー、すごい戦いだべなぁ。あんなすごい戦いをするのに悪人なんだべか」


「しー、リタさん声が大きいです」


 驚いたエメラン君がリタをたしなめる。

 リタは慌てて口を閉じるが、幸いな事に周囲の人間達は水晶スクリーンの中で戦うユウジンの活躍に夢中となっていて、誰もリタの言葉を聞いていなかった。


「あの装備を見てください。武器はブッタギール社のカスタム品、鎧はヨッローイ社の複合魔術鎧、脚に履いているのはミドゥー社のサハギンパドル、篭手と脚甲はオプショナ社の特注品ですね。身に着けているアクセサリの類も高級なマジックアイテムです。それに空間収納式のマジックボックスを持っている事も確認されています。とても地方勇者が持てる装備ではありませんよ」


「ええと……?」


 エメラン君に説明されても、そういった装備品の知識がないリタにはチンプンカンプンであった。


「……つまり超のつく高級品という訳です」


「分かったべ!!」


「最近、希少な魔物や危険区域の鉱石が減少している事が、調査の結果判明したんです。そしてそれから暫くして、勇者ユウジンが現れました。その事から違法な魔物狩りや採掘を行っているのは彼なのではないか? という疑惑が持たれたのです」


「すぐじゃなくて暫くなんだべか?」


 エメラン君の言葉に疑問を投げかけるリタ。


「はい。彼の持つマジックアイテムはオーダーメイドの高級品ですので、注文をしてから商品が完成するまでに時間が掛かるんですよ。我々も初めは彼の事を疑っては居なかったのですが、魔法通信で彼の装備について疑問を唱える考察があるという話を聞きまして。それで調べたらこれは確かにおかしいと」


「なるほどー。そう言う事だったんだべか」


 ちなみに魔法ネットとは、遠距離の相手と文字や映像を使ってコミュニケーションを取れる情報端末の事である。

 

「けど、どうやって密漁されてるなんて分かったんだべ?」


「実は僕、海洋魔物学者を目指してたんですよ。それで学校のレポートを書く為に実地調査をしていたら、密漁や環境汚染の現状を知ってしまって。知識としては知っていましたが、実際の光景をみてしまったらいてもたってもいられず、それでご当地英雄になって多くの人に現状を知ってもらおうと思ったんです!」


 エメラン君が拳を握って力説する。

 もっとも、外見は着ぐるみなので、腕を曲げてプルプルしている様にしか見えなかったのだが。 


「おおー。エメラン君は立派だべなぁ」


「いえ、そんな事はないですよ」


 着ぐるみがくねくねと踊りだす。どうやら照れているようだ。


「それでどうやって捕まえるつもりなんだべ?」


 リタに質問されたエメラン君が、ぴたりと動きを止めた。


「それについては考えがあります」


 ビシッ!と人差し指を立てたものの、寸詰まりの半魚人ではいまいち恰好がつかないエメラン君であった。


 ◆


 夜、暗がりの中を歩むのは二人の男女だった。

 いや、歩いてはいない。彼等は泳いでいた。

 更に言うと片方は半魚人の着ぐるみだった。

 そう、リタとエメランくんである。

 彼等は今、海の底にある魔王ディープブルースの城へと向かっていた。


「しっかし、この海神の鱗ってのは凄いもんだべな。水の中でもぜんぜん苦しくないべ」


 リタ達が使用している海神の鱗は、ユーシャ達が撮影で使用した物と同型のマジックアイテムだった。


「調査用の機材ですので大事に扱ってくださいね。……それにしても良かったんですかリタさん? 貴方は観光でいらしたんでしょ? この先は本当に危ないんですよ」


 今更ながらにエメラン君が、付いて来たリタを心配する。


「なーに言ってるんだべ。困った時はお互い様だべ。同じ泥棒に困るモン同士協力するべ。それに魔王さ倒されたから、心配ないって言ってたのはエメラン君だべ」


「それはそうですが、それでもはぐれ魔物が現れる事もあります。いいですか、もし魔物が現れても絶対に騒がないでください。そして僕の指示に従ってください。いいですね?」


「オッケーだべー」


 気楽に答えるリタ。エメラン君は真面目に言っているのだが、どうにも着ぐるみ姿では説得力に欠けていた。

 仕方なく海底に向かって行くエメラン君。しかし途中で彼の動きが止まった。


「どうしたん……」


「しっ!」


 リタの言葉をさえぎるエメラン君。


「こちらへ、頭を低くして静かに」


 物陰に隠れた後、エメラン君が小声でリタに指示を出す。その声から危険を察知したリタは無言で頷いた。

 明かりを消し身を潜めていると、何かが近づいてきた感覚を覚える。

 だが明かりを消した深海の中では、そこに何が居るのかすら判断がつかない。

 そうしてどれだけの時間がたったのだろうか。暗い海の中では時間の経過も分からなかった。



「もう大丈夫ですよ」


 暫くして、エメラン君が明かりを付けリタに話しかける。


「一体何が居たんだべ?」


 リタの問いにエメラン君が答える。


「ビッグプレートです。率先して人間を襲う魔物ではありませんが、食料と勘違いされたら危険です。とにかく大きいので近づかれたら一口で食べられてしまいます。くれぐれも気をつけてくださいね」


 自分が一口で食べられる姿を想像して震えるリタ。いかに危険な魔族や魔王と遭遇して危険に慣れてといっても、それはユーシャが居たからこそ。戦えない自分達だけしか居ない時に魔物を恐れるのは当然だ。


「よっく分かったべ」


 ◆


 そうして暫く潜って行くと、昼間水晶スクリーンに映し出されていた魔王の城が見えてくる。


「ここに居るんだべか?」


「ええ、サファイアフィッシュは元々このあたりで暮らしていた魔物です。放送で発見された理由はサファイアフィッシュの生態が原因なんだと思います。彼等は基本的に住処を変えない生き物です。魔王が復活した際に一度住処を追われて逃げ出したけど、魔王の城が建造されたのを確認してから隙を見て魔王城に侵入し、元住んでいた区画に戻って再び生活していたという所でしょう」


「なるほどだべ。今回は勇者様が原因で居場所がバレた訳だべな」


 リタはこの場に居ないユーシャの事を思い出していた。


「エンフレイムの勇者様でしたっけ? その人が協力してくれれば心強かったんですが」


 だが彼はリタの協力要請を断った。その理由は……


「今日は非番ですので。それとここは私の管轄外です」


 ぐうの音もでなかった。


「ここに居ない勇者様の事さ考えてもしかたないべ! 今日は私達であのニセ勇者をやっつけるべ」


 ユーシャが手伝ってくれなかった事に腹を立てながら、リタは拳を握り締める。


「落ち着いて下さい。今回はあくまで犯罪の証拠を握るのが目的なんですからね」


「もっちろんだべ!!」


「大丈夫かな……」


 力一杯答えるリタの姿にエメラン君は一抹の不安を抱いた。


 ◆


 闇に閉ざされた魔王城を進む一つの光。


「居た居た」


 その視線の先にはあのサファイアフィッシュ達の姿があった。

 光を当てられたサファイアフィッシュ達は即座に暗がりへと逃げ込む。

 彼は慌てる事無く手にした水晶玉に魔力を通し、サファイアフィッシュ達が隠れる暗がりにその水晶玉を放り投げた。

 そして手にした魔法障壁を発生させる魔法具を発動させた後、暗がりでバチリと大きな音が鳴った。

灯りで照らすと細長い輝きが海中に踊る。

 それは雷魔法で気を失ったサファイアフィッシュ達だった。

 その人物は乱暴な手つきで、サファイアフィッシュ達をカゴに入れていく。


「よしよし、気絶させただけだからキレイなモンだぜ」


 その正体はエメラルドビーチの専属勇者ユウジンだった。


「大量大量。まさかサファイアフィッシュが複数手に入るとはな。さてはコイツ等、魔王の傍だからって安心して繁殖してたのか?」


 ユウジンはサファイアフィッシュを一匹残らずカゴにしまい、フタを閉めカギを掛ける。


「それじゃ、こんなシケた場所からさっさとお暇させてもらおうか」



 サファイアフィッシュを確保したユウジンは、カゴを抱えて魔王城の外に向かう。

 そしてそれを、影から見ている者達が居た。


「このままじゃ密漁されちまうべ、どうするんだべ?」


 事の成り行きを隠れてみていたリタは、同じく隠れていたエメラン君に詰め寄った。


「静かに。ここは一旦盗みを成功させるんです。仮にも彼は勇者ですから、戦いになったらこちらに勝ち目はありません。今はこの水晶カメラに記録する事が優先です」


 水晶カメラ、ソレは記録した光景を専用のマジックアイテムで再現できる記録装置だ。

 水晶カメラの中には映像結晶と呼ばれる特殊な加工のされた水晶が入っており、水晶カメラが映した光景をこの映像結晶に保存される構造となっていた。


「なるほどだべ、悪事の証拠を持って役所さ乗り込むんだべな」


「そいつは困るな」


 突然耳元で声が聞えた。

 リタが振り向こうとしたが、その前に羽交い絞めにされ身動きが取れなくなる。


「い、何時の間に!?」


 リタを羽交い絞めにしたのはユウジンだった。


「とっくに気付いてたよ。俺は勇者様だぜ? 不意打ちしてくる魔物の気配を察知するなんざ朝飯前だっつうの」


 ソレは正解ではない。正確には彼のピアスの力である。彼のピアスは、悪意の知らせという名の敵意や殺気を知らせるマジックアイテムだった。悪意の知らせは本来30cmほどの四角い金属板の四方に魔法石が取り付けられたもので、使用者の前後左右のどちらに敵が居るのかを魔法石が光って教えてくれるものだ。だがユウジンの悪意の知らせは特注品らしく非常に小さく携帯性に優れていた。警告の仕方もそれ専用に調整してあるのは一目瞭然だった。

 しかしここまで小型高性能となれば値段も相当なものになる。

 とても国営勇者の給料で買えるようなモノではない。

 それは同時に彼の装備が密漁で稼いだ金でそろえられたと自供しているのに等しかった。

 彼はリタの首を絞めながらエメラン君に命令する。


「この女の命が惜しけりゃその映像結晶をよこしな!」


「う、うくっ……」


「リタさん!」


 苦しそうな声を上げるリタ、そしてそんな彼女の姿を見て愉悦の表情を浮かべるユウジン。


「ほらほら、早くしないとこの女の命が無いぜ。それともコイツを見捨てて逃げ出すか?」


 それは選択の余地の無い質問だった。

 観念したエメラン君は、水晶カメラから映像結晶を取り出しユウジンに放り投げる。


「よーしいい子だ」


 ユウジンは、エメラン君から受け取った記録水晶を事も無げに砕く。

 コレもマジックアイテム巨人の小手の力だ。


「証拠は渡した! その子を放せ!!」


 しかしユウジンはリタを手放す事無く更に力を込めた。


「ぐっ!? ぅぅ……」


「おい! どう言う事だ、約束が違うぞ!!」


 ユウジンはエメラン君に対し見下した笑みを浮かべながら笑う。


「バカかお前は。密漁の現場を見られたってのに生かしとく訳ねぇだろうが。お前もこの女も仲良く殺してやるよ。表向きは……そうだな、夜中に二人っきりになろうとして魔物の居なくなった魔王の城に潜り込んだカップルが、たまたま残っていた魔物に惨殺されたってとこか。安心しろよ、事件があったら観光客が減って自治体も困るから、お前等の死は無かった事にされる。行方不明扱いだ」


 以前にも同じ出来事があったのだろうか? ユウジンはやけに具体的にこの後に起こるであろう出来事を説明した。


「そ、その子を放せぇぇぇぇ!!」


 一か八かエメラン君がユウジンに向かって突撃する。

 彼自身勝てるとは思っていなかった。ただ、ユウジンの気を引いて、せめて巻き込んでしまったリタだけでも逃がそうとしているのだ。


「だから甘ぇんだよ!!」


 だがユウジンは仮にも勇者、素人の策を見逃すほど甘くは無かった。

 エメラン君のタックルは易々とかわされ、逆にカウンターの膝蹴りを喰らってしまうエメラン君。


「かはっ!!」


 そのまま倒れたエメラン君に向かって、何度も蹴りを放つユウジン。


「はははははっ、安心しろ。俺も時間をかけたくないからな。苦しまないように殺してやるぜぇ!」


 リタの首を絞めたまま、エメラン君の頭に足を乗せるユウジン。マジックアイテムで倍加した脚力でエメラン君の頭を踏み潰すつもりだ。


「うあぁぁぁぁぁ!!」


 その時だった。

 エメラン君を踏みつけていたユウジンの姿が突然掻き消えた。


「え?」


 エメラン君を足蹴にしていた重さもなくなる。

一体何が起こったのかと、痛む体に鞭打ってエメラン君は身を起こしユウジンの姿を探す。

 そこでエメラン君が目にしたのは……


「………」


 ディフォルメされた人魚の着ぐるみだった。


「あれは……ビィチちゃん?」


 ビィチちゃん。それはエメラン君と合わせて作られたご当地英雄の競合用着ぐるみであった。

 当初この二つの着ぐるみが作られ、より人気のある着ぐるみをご当地英雄にしようという事になっていた。

 結果はビィチちゃんの圧勝。

 半魚人では人魚の愛らしさには勝てなかったのだった。

 だがその結果をしてなおエメラン君が正式なご当地英雄として採用された。

 それは何故か!?

 答えは単純だった。

 ビィチちゃんの下半身は魚なので非常に動き辛かったのだ。

 あと名前がちょっと問題視された。

 そうした理由からエメラン君が正式採用され、ビィチちゃんは倉庫で眠る事となった。

 筈であった。


「一体誰がビィチちゃんを……」


「っ手っ前ぇ! よくもこの俺様を!!」


 漸く吹き飛ばされた事を理解したユウジンが立ち上がる。


「……」


 ビィチちゃんがユウジンに向けて腕を突き出し、手首をクイクイッと動かして挑発する。

 見た目が愛らしい人魚なのに、格闘家のようなリアクションがシュールである。


「ふざけんなよ手前ぇ! こっちには人質が居るんだぞ!!」


 そう、ユウジンの腕の中にはつかまったリタの姿が……なかった。


「あ、あれ? あの女どこ行きやがった!?」


 慌ててリタを探すユウジン。

 そんなユウジンの姿を尻目に、ビィチちゃんがエメラン君の元にやって来る。

 その腕にリタを抱いて。


「リタさん……」


 意識を失っているが呼吸は確かだ。エメラン君は安堵する。

 ビィチちゃんはエメラン君にリタを差し出すと、すっくと立ち上がりユウジンへと向き直った。


「……」


 そしてピョコピョコと左右に跳ねて、両手をパタパタと動かす。

 その行動の意味は良く分からないが、おそらくユウジンを馬鹿にしているのであろう事は理解できた。


「この俺を、勇者である俺を、ここまでコケにしてくれるとはな……」


 ユウジンの声が低くなる。


「ただで済むと思うんじゃねぇぞぉぉぉぉぉ!!!」


 の気合と共に魔王城が振動する。


「あ、あれは水晶スクリーンで見せた魔法…・・・」


 フルフォースマナアームズ、それは世界最強の魔法。

 しかしユウジンが使うそれは、本物とは似ても似つかぬ出来そこないのモドキだった。

 だがそんなモドキでも魔王との戦いにおいては十分な威力を発揮する。普通の人間であるエメラン君にとっては十分すぎる脅威であった。

 しかし当のビィチちゃんといえば。


「……」


 やれやれといったリアクションを取って、私は呆れているとユウジンに無言で語りかける。


「は……はっ! 随分と余裕じゃねぇか。だったらコイツを喰らってみなぁぁぁぁぁ!!」


 ユウジンがビィチちゃんの懐に現れる。

 フルフォースマナアームズ(モドキ)によって強化されたユウジンの身体能力は超人のそれとなっており、一般人であるエメラン君の目ではその動きについて行く事は不可能であった。

 ユウジンがビィチちゃんに向けてボディブローを放つ。

 ただでさえ動きづらい着ぐるみだというのに、そこに魔法で強化された一撃が放たれる。

 ビィチちゃんの胴体が中身ごと吹き飛ぶのは当然の結果……


「何ぃ!?」


 であった筈なのに、ビィチちゃんはユウジンの攻撃を華麗に回避していた。


「ば、馬鹿な!!」


 必殺の一撃を回避され、驚愕するユウジン。

 しかもそれだけでは終わらず、ビィチちゃんのアッパーがユウジンの顎を捉えた。


「へぶぅ!」


 ビィチちゃんの一撃を受けたユウジンは宙を舞い、頭から地面に落ちる。

 そして数度痙攣して、ユウジンは白目を剥いて意識を失った。 


「道具に頼りきっているから、それ以上の実力の持ち主には対応できないんですよ」


 ここに来て、ビィチちゃんが初めて声を発する。

 その声は若い男性の声だった。


(どこかで聞いた様な気が?)


 そう思ったものの、エメラン君はその声の主を思い出せずに居た。

 その間にビィチちゃんは気絶したユウジンを拘束し、ヒョイっと肩に担いでエメラン君の下にやって来る。


「……」


 ビィチちゃんの正体が分からず警戒するエメラン君。


「ああご心配なく。敵ではありませんから。魔王が退治されたとはいえまだまだ危険です。浜辺までお送りしましょう」


「はぁ……」


 ◆


 こうしてエメラン君達は、ビィチちゃんに先導されて陸に戻ってきた。


「ここならじき巡回の警備員に発見されるでしょう。後の事はお任せします」


「わ、分かりました」


 事情も素性も分からないがビィチちゃんは敵ではないらしい。

 エメラン君はそれで納得する事にした。下手に深くかかわるのも危険な気がしたのだ。


 ビィチちゃんはユウジンを砂浜に置くと、ポケットから取り出した映像結晶をエメラン君の手に握らせる。


「コレは?」


「証拠は複数用意しておくものです」


 それは間違いなくユウジンの犯行を撮影した物だろう。エメラン君は去り行くビィチちゃんに頭を下げた。

 

「……それにしても、リタさんのトラブル体質にも困ったものですね。まぁおかげで良いモノが見れましたが」


 かろうじて聞こえるくらいの小声でビィチちゃんが呟く。

 それはどういう意味かと問い質そうとしたエメラン君だったが、その時には既にビィチちゃんの姿は遠く暗闇の中にまぎれようとしていた。

 びょんびょんと尻尾を跳ねてジャンプしながら。


「動きずらそうだなぁアレ」


 採用されたのが半魚人でよかったと心から思うエメラン君であった。


 ◆


「本日未明、エメラルドビーチ専属の勇者ユウジン氏が保護指定魔物を密漁していた件で逮捕されました」


 エメラルドビーチは、一面ユウジン逮捕のニュースで持ちきりとなった。

 そして、海岸に縛られた状態で打ち上げられたユウジンと共に居たエメラン君。

 彼の手に握られていた映像石によって、ユウジンの犯罪が明らかになったのだ。

 それもあってユウジン逮捕に一役買ったご当地英雄エメラン君は、一躍町のヒーローとなった。


「エメラン君、どのようにしてユウジン氏を捕獲したのですか」


「ぜひお声を聞かせて下さい!」


「いや、その、彼を捕まえたのは僕ではなくですね、僕は彼等の犯罪の証拠を掴みに行っただけです」


 大勢のマスコミに囲まれ、しどろもどろで応えるエメラン君。

 まだまだ彼へのインタビュー攻撃は終わりそうに無かった。

 そんなニュースが流れる水晶モニターを見ているのは、朝食を食べに町へ出てきたリタとユーシャだった。


「皆現金なもんだべ。昨日までは馬鹿にしてたクセに」


 突然の手のひら返しにリタは不満そうだった。


「私はエメラン君が良い奴だって最初から気付いていたべ!」


「そうですね」


 リタの言葉に合いの手を入れながら食事に専念するユーシャ。


「本当に、彼こそ海の勇者ですよ」


 リタの耳に聞えない程小さな声で、ユーシャは満足げに呟いた。


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