6.闘技大会

 貴賓席の貴族らしき男が大会の開始を宣言すると、闘技場の観客席が歓声に包まれた。大会の常連参加者の名なのか、誰かの名前を叫んでいる客も居る。

 闘技場の中心にあるアリーナには、三十名ほどの参加者が集まっていた。緊張の面持ちで開始宣言を聞く者や雄叫びを上げる者、静かに目を閉じている者など様々だ。

 参加者のほとんどは男性だったが、女性の姿もちらほら見られた。そのうちの一人、銀髪の冒険者ディーは、開催宣言が終わるとすぐに身を翻して歩き出した。

 ディーがこの大会に参加したのは、ある依頼を受けたからだ。依頼の達成条件は、大会に優勝し、副賞の魔道具を手に入れることだ。

 もちろんそう簡単に優勝できるとは思っていないが、途中で負けても前金分だけは貰える。大怪我をしないようにさえ気をつければ、腕試しにもちょうどいい。一応、対戦相手の殺害と、治癒不能な傷を負わせることは反則扱いになっている。

 アリーナの出入り口の扉を開いた時、壁に背を預ける、髪を剃った格闘家風の男と目が合った。その男はにやにや笑いながら、こちらをずっと観察している。

 口元を歪めて視線を外すと、ディーはアリーナを出て控え室へと向かった。


 ベルトに刺したナイフのうちの一本を抜いて、ディーは対戦相手と対峙した。試合開始時の相手との距離はルールで決まっていて、両手剣がぎりぎり届くか届かないか程度の間合いだ。ディーにとっては問題ないが、得物によっては近すぎるだろう。

「よ、よろしくお願いします!」

 対戦相手の男は、青ざめた表情で短剣を構えていた。背はディーより低く、新品らしき金属鎧を着ている。

 試合開始の掛け声とともに、ディーは一歩踏み込んだ。相手は剣を真上に振り上げ、思い切り振り下ろす。

 目の前を通り過ぎる剣の軌跡を見送ってから、ディーはさらに踏み込み、男に肉薄する。相手の頭をナイフの柄で殴りつけると、昏倒してその場に倒れた。

 ディーの勝利が宣言されると、大きな歓声が上がった。だが試合があっさりと終わりすぎたせいか、野次も混じっている。

(何しに来たのかしら)

 運ばれていく対戦相手を見ながら、首を傾げる。大会の参加費はそこそこの額なのに、余裕があって羨ましいことだ。

 観客席に適当に手を振ってから、ディーはその場を去った。


「…あなた、試合のルール聞いてた? それ、手加減できるわけ?」

 次の対戦相手は、ぼろ布のような服を着た大男だった。ディーよりもかなり背が高く、横幅もでかい。

 そして、巨大な棘付きメイス、いわゆるモーニングスターを右手に構えていた。あんなものを喰らえばただでは済まない。頭に受ければ即死だろう。

「……」

 ディーの言葉に、男は手元のメイスをじっと見つめる。

「努力はする」

 しばらく考えたあと、男はぽつりと言った。

 試合の開始が宣言され、ディーは気を引き締めてナイフを構えた。相手の攻撃は、一度たりとも喰らうわけにはいかない。

(降参するのもありだけどね)

 依頼人には文句を言われるだろうが、命を危険に晒すことに比べたら安いものだ。

(少しだけ様子を見ようかしら)

 やばそうだったらすぐに降参しよう、と心に決める。

 男が無造作に一歩踏み出して来たのを見て、ディーは予備動作無しに走り出した。だがその行動を読んでいたのか、ディーが動くのと同じタイミングで男も後ろへ向かって跳ぶ。同時に、メイスを真上から振り下ろしてくる。

 ディーは慌てて急停止し、体を逸らしてなんとかメイスの攻撃を避けた。

「頭狙ってどうするのよ!」

「手加減はした」

 抗議すると、男は短く答えた。確かに、メイスの振り下ろしは若干遅く、全力ではなかったようだが……。

 ディーは舌打ちすると、左足を思い切り引いて半身になった。顔の正面に、右手のナイフを構える。

 相手の攻撃態勢を見て、男は庇うようにメイスを正面に構えた。それを確認してから、ディーはナイフを投げつけ、走り出す。

「む」

 男はナイフの軌道に正確にメイスを動かした。硬い金属音が響いて、ナイフが弾き飛ばされる。

 だが次の瞬間、男が驚愕して目を見開く。男の右腕には、別のナイフが深々と突き刺さっていた。最初のナイフを囮にして、密かに左手で投げていたものだ。

 一気に距離を詰めるディーに、男はメイスを振り下ろした。しかし怪我のせいで勢いに欠けるその攻撃を、ディーはスライディングしてかわす。メイスが地面に到達するころには、男の股の間をくぐって背後へと抜けていた。男が振り向く間に素早く立ち上がると、新たに抜いたナイフを首筋へと突きつける。

「降参してくれない? あたし、反則負けになりたくないの」

 本気であることを示すために、ナイフを押し付ける。男の首筋から、血が流れた。

 男はメイスを手放して、両手を上げた。それを見て、武器を引く。

 とぼとぼと帰っていく男の後姿を見ながら、ディーは深く息を吐いた。

 

「まさかあんたと戦えるとはねえ。運がいい」

 次の対戦相手は、開催宣言の時にディーを観察していた、格闘家風の男だった。相変わらずにやにやした笑いを浮かべながら、ねっとりとした視線を向けてくる。

「むさ苦しい男を殴るのも飽きてきたところだ。やっぱり多少は華があった方が、お客さんも喜ぶよなあ?」

 ディーは何も言わずに、ナイフを構える。その様子を見て、男は肩をすくめた。

「つれないねえ。それにしても、もう少し露出度の高い服でも着たらどうかね? せっかく女なのにさ」

「はあ?」

 確かにディーの着ている服は、ほとんど肌の露出が無い。手にもグローブを嵌めているので、首から上だけだ。

「戦うのに肌が出る服なんて着てくるわけないでしょ」

「へえ、じゃあ普段は見せてるわけだ。是非拝んでみたいねえ」

「…馬鹿じゃないの」

 ディーは吐き捨てるように言うと、男を睨みつけた。こんなやつと会話するんじゃなかった、と後悔する。

「おお、怖い怖い。キツい女はモテないぜ? それとももしかして、ベッドの上では可愛いとかいうやつ?」

 男の下衆な軽口に、ディーの視線が氷点下まで下がる。試合開始の合図と共に、二人は同時に走り出す。

 ディーがナイフを突くと、男は真上を向くほどに上体を逸らし、その攻撃をかわした。と同時に、顔を狙って左足を蹴り上げてくる。

 体を引いて、蹴りを避ける。相手が体勢を崩している今のうちに、と再度ナイフで攻撃しようとしたが、

「……っ!」

 突然の痛みと衝撃に、息を詰まらせる。斜め下から踏みつけるように、男の右足がディーの左肩を蹴り抜いていた。

 男の両足は地面から離れている。頭と両手を地面につけ、器用に体を支えていた。

「よっと」

 腕を伸ばして地面を押すとくるりと半回転し、ディーの目の前に両足で着地した。

「いいねえ、その表情」

 肩を押さえながら苦痛に顔を歪ませるディーを、男は熱の篭った目で見つめる。

「でも肩じゃあ、いまいちだよなあ。次はどこにして欲しい?」

「う……」

 ディーはうめきながら、よろよろと数歩下がる。その姿を見て、男はさらに興奮したようだった。

「決めた!」

 そう叫ぶと、男はディーに向かって走る。その勢いのまま、ディーの腹部へ向けて、回し蹴りを放つ。

 蹴りが入ると同時に、ディーの体が吹き飛んだ。これでしばらく動けないだろう、男はそう判断して、対戦相手の元へと近づいた。

 ディーは腹を押さえながら、身を屈めている。そのせいで見えない顔を上げさせようと、相手の髪を掴んだその時、

「……ぁ……?」

 凄まじい衝撃を受け、男は頭の中が真っ白になった。ディーの足が、自分の股間を蹴り上げているのが視界に入る。少し遅れて激痛と猛烈な吐き気が襲い、その場にうずくまった。

 男が顔を上げると、冷たい視線で見下ろしてくるディーの姿が目に入った。

「てめぇ…騙した…な……」

「馬鹿ね。気づかなかったの?」

 攻撃を受ける直前に後ろに跳んだおかげで、ほとんどダメージは受けていない。すぐばれるかと思ったが、どうやら気づかれなかったようだ。

「で、どうするの? もっとしっかり潰してあげてもいいけど?」

 男の目の前の地面を思い切り踏みつける。その動作に、男の顔がさらに青ざめた。

「こ、降参する……」

 そう言いながら、がっくりと肩を落とした。


 闘技場の真ん中で、ディーは対戦相手を待っていた。次はいよいよ、準決勝だ。

 肩の傷が痛んで、ディーは眉を寄せた。回し蹴りはともかく、その前の蹴りはもろに受けてしまった。

(次も勝ちたいところだけど)

 賞金が出るのは準優勝からだ。次勝つか負けるかで、今日の収支はかなり変わる。

 しかし、傷を受けた状態で、ここまで勝ち上がってきた相手に勝利できる自信はない。さっきの男だって、作戦がたまたま上手くいったからよかったものの、まともに戦っていれば勝てたかどうかは怪しい。

「よお。遅くなって悪いな」

 しばらくして、反対側の入り口から対戦相手が表れた。体格の良い、ディーより少し背の高い男だ。

 相手はいかにも冒険者といった出で立ちだが、レイピアを武器にしているのはちょっと珍しい。相手が人間ならともかく、魔物と戦うのにはあまり適していない。皮膚の硬い魔物相手だとかなり困るだろう。それに目の前の男が、長剣が扱えないほど非力だという風にも見えない。

「あなた、冒険者なの? 細剣使いなんて珍しいわね」

「ん? 俺は剣ならなんでも使えるぞ。今日はこいつを使いたい気分だったんだよ」

 男はポーズを決めるかのように、レイピアを高く掲げる。体格の良いその男には、細身のその剣はあまり似合っていない。

(変なやつ)

 男の態度に、気が抜けてしまった。だが準決勝まで残ったのだ、それなりの実力はあるだろう。凄まじく運がいいという可能性も、まあ無くはないが。

 試合開始が宣言されると同時に、ディーは走り出した。真っ直ぐに突いてくる相手の攻撃を、横に跳んでかわす。続けて男の間近まで跳ぼうとしたが、先手を打ってレイピアで牽制されてしまう。

 ディーの動きに合わせて、男は巧みに武器を操る。ナイフの攻撃圏内まで近づけず、唇を噛んだ。

 相手の攻撃が、さらに激しさを増した。じりじりと近づいてくる男に、後退せざるを得なくなる。

 打開策が見つからないでいるうちに、下げた右足が壁に当たった。これ以上後ろに行くことはできない。

 男のレイピアが引かれた瞬間、ディーは意を決して壁と地面の境目を蹴った。一気に加速すると同時に、接近するレイピアの横腹に、ナイフを思い切り叩きつける。その攻撃がディーに到達する寸前に、切っ先が僅かに逸れた。

「いい反応してるな!」

 男が嬉しそうに言う。ディーは相手の脇腹に向けてナイフを突き刺そうとしたが、左手で手首を掴まれ、動きを止められた。

 振り払おうとしても、男の手はぴくりとも動かない。再びレイピアが引かれるのを見て、ディーは左肩から相手にタックルする。男は一歩下がっただけで、体勢を崩されもしなかったが、ここまで密着しているとレイピアで攻撃するのは難しい。

「つっ……!」

 肩に強い痛みが走り、ディーは顔を歪めた。左手でナイフを抜こうとするが、痛みのせいで取り落としてしまう。

「ふーむ?」

 その様子を見て、男は首を傾げた。その隙にディーは、手首のスナップだけで右手に持ったナイフを投げ上げ回転させると、逆向きに持ち直した。自分の手首を掴む男の手に、ナイフを突き立てようと試みる。

 しかし男は、掴んでいた手首を離すと、ディーの体を思い切り押した。足元を縺れさせながら、相手との距離を取る。

 男を睨みつけながら、ディーは歯軋りした。せっかく近づけたのに、一度も攻撃を当てることができなかった。あとはナイフを投げて遠隔で攻めるかだが、この男に通用するかどうか。

 迷っている間に、相手がこちらへと走ってくる。素早くレイピアで攻撃を加えてきたが、先ほどよりも動きが単調で、ディーの左腕を執拗に狙ってくる。付け入る隙があるようにも思えたが、あまりにもあからさまだ。

「なあ、ちょっと相談なんだが」

 攻撃を繰り返しながら、男がディーにだけ聞こえる小声で話しかけてきた。

「一つ頼みを聞いてくれたら、負けてやってもいい」

「なんですって?」

「この大会が終わったら、ある人物と会って欲しい。あんたはそこで仕事を依頼されるんだが、受けるかどうかは話を聞いてから決めていい。どうだ?」

「…いいわよ」

 後ろに跳んで少しだけ考えた後、ディーは承諾した。怪しげではあるが、準優勝の賞金が貰えるのが確定するのは大きい。

「よーし、行くぞ」

 大仰な動作で、男がレイピアを構える。相手の意図を理解して、右足を引いた。

 男が攻撃を繰り出してくるのと同時に、ディーは走る。先ほどまでと同じく左腕を狙ってくる攻撃を、ナイフで弾いた。そのまま男に肉薄すると、首筋にナイフを突きつける。

 何も言わずに、男はレイピアを放りだして両手を上げた。観客席から、わあっと歓声があがる。

「じゃあ待ってるからなー」

 武器を拾うと、男は去って行った。片手を上げる男を見送ってから、控え室へと向かった。


 左右の手でそれぞれナイフを抜くと、左肩の痛みが酷くなって、顔をしかめる。そろそろ限界だろう。

 直後、決勝戦開始の宣言がされ、歓声と応援の声が沸きあがった。

「始めてもいいだろうか」

「…いつでもどうぞ」

 対戦相手に声をかけられ、ディーは両手のナイフを目前に構える。わざわざ聞いてくるとは、律儀なやつだ。

 決勝戦の相手、アインスはがっしりした体格で、男性の平均身長ほどのディーよりまだかなり背が高かった。身に纏ったシンプルなコートはかなり着古されているが、質はいいように見える。歳はディーと同じぐらいだろう。

 アインスは細身の長剣を右手に構え、左腕には小さな盾を装備していた。あれは一般的な断ち切るための剣ではなく、恐らく切り裂くことを目的とした武器だ。

「では、こちらから行かせてもらう」

 動かないディーを見て、アインスがそう宣言した。こちらに迫るスピードは、思ったよりも速い。

 斜め上から振り下ろされる剣を、ディーは左のナイフで弾こうとした。しかしその攻撃は、想像よりも遥かに重かった。剣は全く揺らがず、慌てて右手のナイフも合わせ、クロスするようにして剣を受ける。

 アインスは、左手も剣の柄に添え、両手で力を込めてきた。クロスしたナイフが、目の前まで押し込まれる。何か行動を起こす余裕もない、一瞬でも力を抜けば、そのまま切り裂かれてしまいそうだった。

「降参してくれないだろうか。この剣の切れ味は鋭い。あなたの顔に傷を付けたくはない」

 剣を押し付けながら、アインスが静かに言った。ディーは何も答えない。

 しばらくその状態が続いた後、アインスがはさらに剣に力を込めた。ディーのナイフは胸元まで押し返され、長剣の刃が首筋に触れる。

「諦めてくれないか。私は反則負けになりたくは……」

 二戦目のディーと同じ台詞を言おうとして、アインスは目を見開いた。その視線の先にあるのは、さっきまでは手とナイフの陰になって見えなかった、ディーの口元だった。気づくのが、ほんの少しだけ遅い。

「…風よ!」

 ディーは呪文の最後の一節を唱え終わる。ごうっ、と音を立てて、強烈な風がアインスに向かって吹いた。男の体が、地面から僅かに浮き上がる。

 相手の腹を狙って、右手のナイフを繰り出す。だがアインスは飛ばされながらも、体全体を捻るようにしてディーの右手を蹴り上げた。ナイフの軌道が大きく逸れる。

「ちっ」

 舌打ちしながら左手のナイフを投げる。さすがにかわすことも防ぐこともできず、ナイフはアインスの右腕に突き刺さった。

 数歩分後ろに吹き飛ばされ、なんとか転倒せずに着地するアインスを見て、ディーは地面を蹴って走り出す。

 しかし、先に攻撃したのはアインスの方だった。剣を素早く左手に持ち直し、接近するディーに向かって剣を跳ね上げる。目にも留まらぬ速さで繰り出されたその攻撃は、あっさりとディーのナイフを弾き飛ばした。

 新たなナイフを抜く間もなく、剣が同じ軌道を逆向きに走る。ただし今度は、アインスが一歩踏み出した分だけ深い。

 左肩から、斜め下に切り裂かれる。悲鳴を上げようとしたが、激痛で声すら出ない。しりもちをついたディーに、アインスが剣を突きつけた。

「…降参」

 辛うじてそれだけ言うと、観客席から歓声と拍手が巻き起こった。アインスが、静かに剣を仕舞う。

「大丈夫か?」

 アインスがゆっくりと近づいてくる。ディーに手を差し伸べようとしたところで、はっとして顔を背けた。

「なに」

 会話するのも億劫で、ディーは短く尋ねた。アインスは顔を背けながらも、ちらちらとこちらの方を見てくる。視線の先を追ってみると、服が切り裂かれ、胸元が露出してしまっていた。

「その……服を直した方が、いいんじゃないだろうか」

「……。あのね、手を貸すか貸さないか、どっちかにしてくれる」

 男の態度に、ディーはイラっとした様子で言った。破れた服を気にすることもなく、よろよろと立ち上がる。今更差し出されるアインスの手を、払いのけた。

 何か言ってくるアインスを無視して、ディーはアリーナの出口へと向かった。


 表彰式が終わったあと、ディーは医務室で簡単な治療を受けた。さすがに治癒術士まで用意されてはおらず、薬を塗って包帯を巻いた程度だ。しばらくは安静にしておく必要があるだろう。

 闘技場を出たところで、一人の男が待ち構えていた。

「よお。準優勝おめでとう」

「なによそれ。嫌味で言ってるの?」

 むっとした様子のディーに、準決勝で戦った相手、ステフは肩をすくめた。

「で、今から依頼人に会いに行けばいいわけ?」

「んー。そうしようかと思ってたんだが、今日は止めといた方がいいだろ」

 言いながら、包帯を巻いたディーの左肩を指差す。

「あとで連絡するから、連絡先を教えてくれ」

「そ。助かるわ」

 泊まっている宿の名前を教えあったあと、二人は別れた。

(全然駄目だったわね)

 五戦のうち余裕を持って勝てたのは二戦だけで、後半二戦は完敗だった。優勝の目も少しはあると思って参加したのだが、甘かったようだ。仮に対人で食っていくつもりなら、もっと実力を付ける必要があるだろう。

 ディーは自分の所持金から、無収入でも問題ない残りの日数を計算した。ここ最近は報酬の多い依頼ばかり受けていたので、少し余裕がある。その間に、色々な仕事を試してみるつもりだった。

 まずは怪我が治るまでどう過ごそうかを考えながら、ディーは帰路に就いた。

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