023:編集予定

 不意打ちとは言え、たった三秒で二年生の男子は倒れた。当然だ。喉に鋭い拳を一発見舞い呼吸器官を潰して意識の殆どをショックで奪い、最後に倒れた後に後頭部を思い切り踏んで意識を全て奪い取った。

 これは誰も予想していなかったようで、敵勢力である東所根男子高校の二十九人と、聖の味方勢力である隼人と綾乃も唖然として聖を見ていた。聖は倒れている二年生の男子から足を離すと、前方に立っている東所根男子高校の生徒を見渡した。最後に倒れている隼人と綾乃を見る。動じていない顔だった。

 するとまだ動けた二年生の男子が声を上げた。逸早く我に返って聖をどうにかしなければならない。そう思ったのだろう。


「何してる一年! やっちまえ!」


 ほぼヒステリックに似ている叫び。本能的に恐怖感を覚え、一刻も早くここから逃げたいなどの願望から一年生を犠牲にしようとしているのだ。もしくは多勢に無勢で聖を押し殺して生き残るか。そのために一年生で少しでも体力を削っておきたいのだろう。一方その二年生の男子の目の前にいた一年生五人がハッとして二年生を見る。本気で言っているのかと疑いたくなったのだろう。なぜならその一年生達はさらに恐怖を覚え、身体が動かなかったのだから。なのでそんな化物に突撃命令を出した先輩を信じられない様な眼で見たのだ。気持ちは解らなくもないが、二年生も本気だ。「お前達がやらないならまずお前達を俺が殺してやる」といった目で後輩を睨んでいた。どちらにしろ死亡が決定しているようなものだ。


「う…うあ……」

「やっちまえって言ってんだろ!」


 そこで他の二年生も命令に加わった。この連中、後輩や弱者にだけは強気でいられた。そこだけは一丁前なのだが、先輩や強者を前にするとその強気が瞬時に崩壊してしまう。そこにプライドなどは無い。

 とにかく今が楽しければいい。そういう後先を考えず、顧みない生活をしているのでこうなってしまう。今まで雑魚だのチビだのと罵倒し実力を過小評価してきた東所根男子高校のシルバーブリッツ軍勢は、急に強くなって一瞬で二年生を屠った聖を見た瞬間に、自信と余裕が消え失せた。例えるなら強盗に成功して高級な宝石などを我が物とした陶酔感に酔いしれたのだが実は包囲されていることに気付かず、気付いた時にはそこには警察官ではなく警察の中の特殊部隊に囲まれていたような感じ。警察官ならどうになかるものの、さらにその中の精鋭が相手ならばまず絶望を覚えるだろう。今まさにそんな感情を抱いているのだ。自分達とは違って魔術を使わずに相手を倒した実力。接近戦ではまず勝てないと悟った。

 一年生はどうしようもなかった。ついには思考が混乱して五人で囲めば何とかなると至ったのだろうか、一斉に走りだす。すぐに聖を囲むと左腕の腕輪を向けた。隼人が「危ない!」と叫ぶ。綾乃が助けようと身を起そうとする。しかし聖の左腕を見てハッとした。

 聖の左腕が、光っている。詳しく言うと左腕ではなく左腕に填められている腕輪の珠だ。一切の属性の魔術が使えない聖が初めて魔術を使おうとしている。いや初めてではない。綾乃がその初めてを見た。そしてその初めての状況と今の戦況は酷似している。追い詰められて絶体絶命の最中、聖の真価は発揮されるのだ。あの時も、今も。

 聖が発動したのは、引いたカードの半分を占めていたカード。『アーツ』だった。破いて珠にすると灰色になる。いくつもある属性魔術の中で唯一の物理的な攻撃を得意とする。どの属性の基礎的な魔術も満足に使えなかった聖が、現在の図書委員長の勝でさえも実際に見た事が無いと言われる希少な魔術『アーツ』を使おうとしているのだ。『アーツ』から発される光は左腕に集めた。

 左腕を前に差し出す。だがそれは聖を囲んでいる一年生五人に向けられたものではなかった。ゆっくりと拳を握り、右に移動させる。そしてその手を開きながらゆっくりと左にスライドさせた。何事かと見ていた一年生達が驚いた。その掌から何かが出現して伸びたのだ。細い棒のようなもので、左に引かれるようにスライドする動きに反して伸び続けるそれを右手で掴み、一気に引き抜いた。

 薄い茶色をした木刀だった。柄の端に紅い紐飾りがつけられている。変哲もない木刀を無造作に構える。木刀の切っ先が地面に触れる。全身の力を抜いている事が解る。非常に落ち着いているが瞳だけは輝きを失っていなかった。聖を囲む五人を見て警戒しているのではなく、目の前の隼人と綾乃を見ていた。

 刹那、それにも構わずに一年生五人が一斉に魔術を放った。それぞれ異なる属性の魔術。炎、水、草、電、岩の魔術が聖にほぼ同時に襲い掛かった。接近されて射程が二十センチもない距離で放たれれば例え綾乃でも身の安全の保証はできない。

 なのに信じられないことが起きた。聖の姿が消えた。その場から上半身が霞んで消え、撃ち放たれた魔術が今まで聖がいた場所で同時衝突を起して威力を相殺されて打ち消される。すると相殺されたエネルギーが辺り一面に逃げるように広がって、その一帯を土煙を舞い上げた。外側から内側への視界が奪われることになる。外側へゆっくりと広がる土煙ならまだ薄いが、内側は濃霧のようにその場に留まり、聖を襲った五人は互いの姿を辛うじて見える影という視覚情報、または声がする方向でしか確認できない状態にあった。それしか認識できないのだ。嗅覚と味覚は思い切り吸ってしまった土煙によって土の匂い、味で占められていて一時的にとは言え、使い物にならない。冷えた土が炎や電の熱エネルギーによって少しだけ温められて生温かい空気を作り出している。これ以上土煙を吸わないように上着の裾などで口元を押さえているため声もあまり通りが悪い。聴覚は土煙の外側から聞こえる先輩達の怒号でほぼ潰されている。

 その時だった。


「ぐげっ!」


 潰された蛙のような悲鳴が土煙の中で上がった。途端に一年生達の恐怖が膨れ上がった。


「下村! だ、だだ大丈夫か!?」

「お、俺は大丈夫だ! 山中はいるのか!」

「俺は何ともねぇ! 斎藤は!」

「何ともない! 谷田、お前は!?」


 煙の中で互いの呼び合う声がする。聞こえ辛いがそれしか手段がない以上、聖も条件は同じなのだから迷わずこの手段で連絡を取り合う。しかし最後の一年生である谷田の声はいつまで待ってもしなかった。

 まるであの有名な人喰い鮫の映画を見ているようで、心臓が破裂しそうに鳴っていた。まるで悲鳴だ。


「た、谷田ぁ!」

「返事しろ、谷田!」

「くっそう、谷田がやられた!」

「あの野郎、姿隠さずに出て来ぐぎゃあ!」


 再び悲鳴が上がる。まだ土煙は薄まる様子はない。


「だ、誰がやられた!?」

「あの声は山中だ!」

「あ、ああ、ああああああああああ」


 ついに恐怖で精神を潰されたのだろう。一人が絶叫を上げた。


「お、落ち付け岩倉!」

「もう駄目だあ。俺達は殺されるう。奴に食い殺されるあぎゃああああああああ」


 最初に声をかけた少年、岩倉が絶叫と共に悲鳴を上げた。止むと何もなかったように土煙の中は静まり返っている。相変わらず騒いでいるのは土煙の外側だ。二年生と一部の一年生が土煙をどうするか叫びながら相談している。その案の中で固まりそうなのは「土煙の中を集中的にぶっ放す」だ。聖と一年生五人共々吹き飛ばすつもりらしい。 

 残った下村と斎藤はたまらないといった表情でそれを聞くと、


「とにかく巻き添えはごめんだ! 下村、一旦ここから出るぞ」

「お、おう」


 聖は放っておいて土煙から脱出しようと決めた。方向感覚は狂っているがどこからでも全力で走ればすぐに土煙から脱出はできるだろう。

 二人は合流はしないものの、ただそこから逃れるために走った。土煙から出てしまえばこっちのものだ。出たら先輩達と一緒に一斉射撃に専念すればいい。完璧だ。そう思っていた。

 だが、意識熔暗CFOの状態にある聖が狙った獲物をそう簡単に逃がしてくれるとは考えなかったので、二人は一瞬だけ聖への警戒を忘れてしまったのだ。自身の激しい呼吸音と心音で辺りの音を掻き消された。数秒前なら気付けただろう音が片方に近寄っていた。


「あぶっ!」

「さ……斎藤!?」


 斎藤が微かに悲鳴を上げたのを下村は聞き逃さなかった。


「や、やめ――――あああああああああああああ!」


 何かが折れる音が立て続けに聞こえた。下村はもう逃げる意思を失っていた。恐怖で思考が停止。膝が震えて前に歩く事が出来ない。辺りでは一斉射撃が行われる合図が行われようとしている。このままでは自分も巻き込まれてしまう。なのに足が思うように動かない。

 その時だった。背中に硬い感触が当たった。脳にビリっと電気が走る。喉が詰まった。

 刹那、「撃てぇっ」と土煙の向こうで声がして、多数の熱量が迫った。





     SILVER BLITZ





 隼人と綾乃は茫然としていた。土煙に向かって東所根男子高校生が一斉に魔術を放ったのだ。下手な鉄砲数撃ちゃ当たるとは言うが、撃ち過ぎだろう。十センチも隙間もなく、さらに絶え間なく放たれた魔術達の射出は二十秒ほど続いた。

 あまりの威力で土煙など一瞬で払われた。そうして隼人と綾乃の茫然としている理由が敵総力にも理解できるものとなる。綾乃までが茫然とするのだ。それなりの理由がなければそうならない。

 しかしこれは度が過ぎている。絶え間なく射出された魔術もそうだが、


「ば、化物……か?」


 と、誰かが呟く。

 土煙が晴れた中心では、あれだけの総攻撃を受けてもそこに立っている聖がいたのだから。


「緋、之……?」


 この現状を嘘だと疑いたくなった隼人が、目の前の聖を呼び掛ける。だが返事はない。

 聖の足元には光となって散る粒子が大量に溢れていた。これが何を意味するのか。それは魔術の総攻撃を受けて死亡した一年生だった。

 聖は向かって来た一年生五人を土煙の中で亡き者としたのではない。土煙を前にして成す術を無くした敵総力が土煙への一斉攻撃を予想して、一年生全員を動けないように木刀で両足を打ったのだ。骨が折れなくても筋が酷く痛めれば、関節を捩ってくじければ動けなくなる。捻挫と同じだ。動けなくするだけならそこまで時間もかからない。それに気配の消し方も解らない素人を相手にするなど簡単なこと。逆に気配の消し方など無意識の内に出来たし、感覚をほぼ麻痺させてくれる土煙が聖に味方をしていた。一人一人倒して動けなくすることにより残った一年生は混乱してパニックに陥っていく。その慌てようと言えばまったく笑いたくなるものだったが、気分がそれを許さない。東所根男子高校の残総勢力を決して許す気は無かった。己が全てで蹂躙するまで溢れる力の暴走は止まらない。

 動けなくなった一年生をこれ以上の力でねじ伏せるまでもない。一斉射撃の直前に最後の一人を確保して大量の気配の前に差し出した。おまけに背中に掌底を打って肺の中の空気を全て出させ、一時的にだが動けなくした。抵抗されても面倒だ。

 一斉射撃は最後の一人が全て防ぎきってくれた。耳元で小さく悲鳴が聞こえる。だがそんなことはまったくもって気にならない。聖が今感じている怒りを鎮めるにはまだまだ物足りない。その他倒れている四人にも直撃したようで、勿論腕輪も粉々になっただろう。一斉射撃が終わった頃には盾にしていた下村という少年は光となってボロボロと崩れ始めていたので地面に捨てた。辺りを一瞥すると同じように四人も光となって崩れ始めていた。

 仲間を消してしまった影響で敵総力も動揺を隠せないでいた。今までの余裕はとっくに消え失せている。人質にするはずだった隼人と綾乃の存在など忘れるほどにだ。


「………終わりか?」


 腹にゴリゴリと響く様な低い声。小さく呟いたはずだろうに、嫌に耳に入って響いた。

 聖は敵総力が簡単に動けないのを見ていると、痺れを切らして行動に出た。手にしていた木刀を手放した。無造作に放り捨てたのだ。カランと小石にぶつかって小さく音を立てて転がるそれに気を取られた。その木刀がもしかしたら爆発するのではないか。そんなことを危惧していたのだが、まったくそんなことは起こらなかった。それどころか光となって散り、聖の左腕の腕輪の珠に吸収された。その光を目で追っていると――――


「遅い」


 悲鳴を上げる間もなかった。一番前にいる大男の顔面に聖の右足の膝がめり込んでいた。俊敏力が半端ない。五メートル以上はあろうという距離を一瞬で詰め、百九十センチはあろう高さを軽々と跳んだ。

 

「め、ブフ」


 変な悲鳴を上げて大男は体制を崩す。聖は最後まで膝を離さず、地面に後頭部を強く打ち付ける。勢いで跳ねてその後ろにいた男に飛びかかる。それは一年生に聖への特攻命令を出した二年生だった。


「う、うわ、うわ!」


 二年生は慌てて腕輪を聖に向けようとする。しかし聖の方が断然速かった。その左腕ごと蹴り上げる。照準がずれて火球が上空に撃ち上がる。湿っている木の葉を掠ったが引火はしなかった。何が起こったのか一瞬理解できなかった二年生の腹に聖の蹴りが入る。くの字に折れ曲がった上半身に右腕の肘がアッパーのように顎を穿った。口腔を激しく切り、歯が砕けて刺さったのだろう、激しく口から血を吹きだした。倒れた所で腕輪を踏み潰す。

 総勢三十人の敵勢力の中からすでに八人が消えた。残り二十二人。今倒した一人を踏み潰した時にはすでに聖の近くには誰もいなかった。正確には半径三メートルには、だ。二十二人が聖を囲んでいた。今さっきの五人の失敗で何も学ばなかったのか。いや学んでいた。聖が五人に囲まれている時、しゃがんで五人の同時射撃を衝突させて回避した。なので今度は下も上にも腕輪が向けられてどこに移動しようと攻撃が可能なのだ。また聖の俊敏力も見せつけられた。三メートルなんて一瞬で詰めて来くる。なので数人の仲間に向かって掛かられてもその仲間ごと攻撃する気なのだ。

 しかし聖は取り囲まれても冷静でいた。いや目に生気がない。力無くそれらを見ていた。すると左腕の腕輪が灰色に光る。『アーツ』を発動したのだ。先程と同じように左手の掌から何かが現れて右手で掴んで引き抜いた。西洋の剣だった。盾ではない。この状況で有効なのは盾だとは考えるものだろうが、結局は無駄になってしまうだろう。必ず隙が出来るし、一方を防いでも違う場所から攻撃を受けて防御が間に合わなくなる。だからと言ってなぜ西洋の剣なのだろうか。鞘を左手で持って抜剣すると、青白い刀身が姿を露わした。

 

「そんな……無茶だ緋之! 俺達のことはもう良いから逃げろって! 痛っ」


 まだ身を起せない隼人が、絶体絶命の状態にある聖を助けようとする。しかし叫ぶだけで状態を起す余力がもう無い。

 しかし綾乃は隼人を止める。小石を投げて綾乃の方に意識を向けさせた。


「馬鹿、ちょっと待ちなさい」

「何だよ痛ぇな!」

「静かにしなさいって言ってんのよ馬鹿。――――あのクズなら大丈夫よ。あの時と同じなら、この程度で終わる筈が無い」


 綾乃は静かに断言する。隼人は信じられない顔で綾乃を見ていた。

 聖は剣と鞘を構えたまま動かない。隼人が心配そうに見守る中、「撃てぇ!」と敵勢力の声と共に発射された魔術が聖を全方向から同時に、いや多少の時差はあったが、聖を襲おうとしていた。

 しかしそこで聖は動いた。だが一体どこに? 逃げる場所はもうどこにもない。

 なのに聖の足は強気だった。強く地面を蹴ると、素早いステップを踏んだ。何度も何度も細かく地面を踏み付ける。世界一のダンスパーティーでもこんなダンスは見られないだろう。フラメンコに似ているがそんな正しいステップはない。リズムすら統一されずに、迫る魔術をライト代わりに二十二人が取り囲む小さな円をステージに踊る聖は美しく澄んでいて、どこか猛々しい。

 小さなステージで踊る聖は、多方向から降り注ぐ雨のような魔術を紙一重で回避していた。奇跡のような光景を前に、皆唖然としている。一斉に放たれた魔術は聖を攻撃するどころか、再び逆に利用されていた。激しいと見られていたダンスは実はそこまで移動せずに行われ、向かって来る魔術を紙一重で回避することによって攻撃を放たれた方向にいる仲間に当てさせていたのだ。聖は死角だ。全員が聖を見ているのでその先にいる仲間など見ている余裕などない。そうして魔術が放たれてから死角が移動することにより初めて気付くのだ。放った魔術の軌道上には仲間がいて、互いに向けて魔術を放ってしまったことになる。つまり同士撃ちだ。そして『アーツ』で取り出した剣は鞘と共にダンスに取り入れていた。やはり紙人の回避でもどうしても回避できない魔術があるのだ。そういう時は剣で打ち消すか鞘で弾いていた。

 一斉射撃は十秒程で止んだ。互いに互いを撃ってしまったことに気付いて急いで取りやめたのだ。それでも指令が遅れてしまい、何度も中を撃ってしまったことになる。

 しかしそれよりも信じられないのは聖だ。あれだけの攻撃を浴びさせても傷一つ見当たらない。

 東所根男子高校、そして綾乃と隼人も茫然としていた。


「………?」


 もう終わりなのか? そう言いた気な聖の瞳が敵勢力を見渡す。

 聖の回避によって出た被害は、また新たに五人も出てしまった。同士撃ちを浴び過ぎて腕輪どころではなく瀕死の状態にあるのだ。それでもまだ十七人が動ける。そこで新たな指示が出た。撤退の指示だろう。

 どうやら聖の動きはこのような広い広間で真価を発揮すると見たのだろう。十七人は一斉に後退して後ろの森に駆け込んだ。撤退ではなく戦いのステージを変えたのだ。


「阿呆ね……」


 綾乃が呟く。その通りだ。木々という障害物が増えたのは聖だけではない。それどころか急に暗闇に飛びこんだせいで視覚が確保できずにいるのだ。気配の消し方すら満足にできないような素人が気配丸出しで闇の中に飛びこんだ。まさに『頭隠して尻隠さず』のようだ。聖にとっては絶好な狩り場となるだろう。

 聖は剣を手放す。すると剣は光となって左腕の腕輪に吸収される。またあのモーションで腕輪が灰色に光る。

 今度は左手から取り出したのは、拳銃だった。闇の中に向けて数発発砲する。すると闇の中から三人の悲鳴が聞こえ、パリンと腕輪が砕けた音がした。剣だけではない。銃の扱いも慣れている。

 倒れている隼人と綾乃の間を通り、二人を一瞥して闇の中に足を踏み入れた。

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