008:図書委員会集合
言い訳を考えていた。図書委員会に遅れたわけを話さなければ、後で煩い。あの綾乃を顎で動かす上級生なのだから、絶対に後が怖い。
前を歩く綾乃の髪を見ていた。黒いセミロングの髪緑色のカチューシャ。そんな髪が似合う少女なのだが、僕は昨日のことを思い出していた。
闇が辺りを覆い始め、分厚い雲の切れ間から光る月が顔を覗かせた。その一瞬。
あの月を背景に立つ綾乃を、僕は綺麗だと思った。
しかし次に会ったら罵倒を繰り返された。あの綺麗な少女にもう一度会いたいと思ったが無理だろう。
なによりあの非現実的な世界に再び戻りたくない。
「着いたわよ。入りなさい」
目の前で聞こえた綾乃の声に驚いた。どうやら図書室に到着しらたしい。
まさか眼前にまで迫られているとは思っていなかった。拳ひとつ分しか入らない距離まで僕たちは近づいていた。身長も5センチくらいしか差が無いので顔が近い。
驚いて目を見張ると、
「なによその顔。蹴り殺したくなる」
普通の女子なら驚くか羞恥で顔を赤らめて離れるか、少し酷くてビンタを頬に見舞うのだろう。
だが綾乃は違った。顔を赤らめることなく眉間に皺を寄せて噛みついて来た。まさかの反撃に僕は黙ってしまう。
どうやら考えごとにふけり過ぎていたようで、僕の方から距離を詰めていたらしい。なのに、この反応はこちらが傷ついて滅入ってしまいそうになる。
「ほら。ちさも早く入りなさいって」
「あ。う、うん」
綾乃が開けたドアからちさが図書室に入る。
続いて綾乃が図書室に入る。その時に舞った髪が鼻に触れる。甘い香りがした。擦れ違いに綾乃は威嚇の舌打ちを忘れない。
最後に僕が落ち込んで図書室に入ろうとする。が、ドアを閉める時に「あれ?」と思って一瞬行動が止まる。
しかしそれで終わった。それを聞こうとした時、もうひとつの大きな疑問を覚えた。図書室にはすでに図書委員会の委員たちが集合しており、担当の教師もそこにいた。
「大兄ぃ……?」
数人の先輩のほか、机に座っていたのは僕の従兄でありクラスの担任である大兄ぃだった。
「まぁたお前は。先生って言えって何回言ったよ、俺。――まぁいいんだけどな。俺自身が図書委員会の担当したんだよ。つーか上に志願した」
「な、なんで?」
「ま、追々話すさ。とりあえず、入れ」
ビシッと大胡は指を向ける。僕は驚いて言葉が出なかった。
数秒の沈黙が図書室に訪れた。今の指示では誰も動かないと判断したのか、一際体が大きい先輩が
「このままじゃ埒が明かないからな。とりあえずそこの3人、この丸テーブルに座ってくれ」
僕たち1年生の他に、先輩は2人だけしかいなかった。男女1人ずつ。その2人がテーブルに座ってので、僕たちもそれに従った。
「もう都竹と知り合ったのか? 早いじゃねぇか」
すでに図書室にいた隼人の隣に座ると、彼は笑顔で話しかけてくれた。
「まぁ、偶然」
「ふーん。でも知り合えたのはラッキーだったな」
それから隼人が視線を指示を出した先輩に向ける。僕もその先輩を見た。
そして先輩が元気よく言った。
「1年生のみんな。よく来てくれたな。歓迎するよ。それじゃ、この図書委員会の仕事を説明するから――」
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