第15話 魔女の修行

翌日からは早速魔法の修行が始まった。

マーリーの指摘通りみちるにも魔法使いの素質はあったものの、それは教わればすぐに習得出来るほど生易しいものではなかった。

そんな現実の厳しさに凹みまくるみちる。


「うわぁ~難しい…」


「何言うてるん!ここからが本番やで!」


マーリーの厳しい修行にそれでも追いつこうと頑張るみちる。

やがて少しずつだが実力も身について来ていた。何事もやれば出来るね!

その様子をレイチェルはやさしい目で見守っていた。

彼もただ何もせずに見守るだけじゃなく出来る限りの雑事をこなしてみちるの修行のサポートをしていた。

そう言う協力もあって安心してみちるは魔法の修行に精を出すのだった。



みちるが魔法の修行を始めていつしか二年の歳月が過ぎていた。

彼女ももうすっかり魔法使いの修行が板についていた。


マーリーも彼女の頑張りに太鼓判を押していた。

ひとつひとつの基礎修行をマスターしてついに今日は形態変化の魔法に挑戦する日。

その日、みちるは朝から緊張していた。


(大丈夫、大丈夫、やれば出来る…)


みちるは同じ言葉を何度も何度もつぶやいていた。


「ほな行こか!」


「は、はい!」


「今までの事忘れんかったら大丈夫やって!」


マーリーの言葉に勇気をもらっていざ挑戦!

みちるは深呼吸すると集中して呪文を唱え始めた…。

魔法は熟練状態になると呪文の詠唱をせずとも変身出来るのだが、やっぱり最初は基本通りに呪文の詠唱が必要だった。


「…よってここに…」


固唾を呑んで見守るレイチェルとマーリー。

今まで真面目に修行してきたかどうかここで試されていた。


「本当はここまで来るのに4年はかかるんやけどなぁ」


「えっ?」


マーリーのその言葉に驚くレイチェル。

そう、普通の半分の期間でみちるは魔法を習得していたのだ。

しっかり魔法の才能も持っていたのはもしかしたら彼女が魔物化した影響かも知れない。

そう考えると複雑な気持ちにもなるレイチェルだった。


「あの子頑張り屋さんやけんもう出来ると思ったんよ」


マーリーのその言葉はみちるをしっかり信頼している証だった。

レイチェルも彼女の言葉にこの魔法はきっと成功すると確信していた。


「…我にその力を!」


呪文を詠唱し終わると共に辺りに力が満ち溢れていく…。

その光は徐々にみちるの体にまとわりついていき…そして…。


ボフンッ!


やや大げさな音と共に光は弾け、魔物だったみちるの姿は以前の人の姿に変わっていた。

形態変化の魔法は大成功だった。


「やったー!」


「おおおっ!」


みちるは大いに喜んでレイチェルに抱きついていた。

レイチェルもまんざらじゃない顔をして喜んでいた。


「よかったなみちる!」


「ありがとう、みんなのおかげだよ!」


レイチェルの祝福の言葉にみんなへの感謝の言葉を伝えるみちる。

この成功に森は幸せいっぱいの雰囲気に包まれていた。

マーリーはみちるの魔法の成功を祝いながら今後の事についての質問した。


「おめでとさん、で、これからどうする?」


マーリーのその言葉に前から思う事があったみちるは彼女に向かって自分の思いを伝えるのだった。


「私、魔法を極めたい!」


「なんや、魔女になろうって言うんかい?」


「はい!これからもよろしくお願いします!」


みちるの決意の言葉にマーリーは少し驚いていた。

彼女が頑張って魔法の修行をしていたのはただ単純に自分の姿を早く戻したいだけだと思っていた。

しかしそれは彼女なりのその先を見据えての行動だったんだ。


「しゃーないなぁ…」


みちるの熱意を受けてマーリーも彼女の申し出を受け入れる事にした。

彼女は真剣な顔をしてみちるに向き合うと更に言葉を続けた。


「基本は教えるけど応用は自分でするんやで」


そうしてみちるの魔法修行は続く事になった。

マーリーも持てる魔法技術の全てをみちるに叩き込んでくれた。


魔法薬、呪文、占い、色んな動物への変化、幻覚、惚れ薬、幻獣との契約、その他諸々…

その全てをみちるはどんどん吸収していった。

乾いたスポンジが水を吸収するようにみちるの魔法技術は向上していく。


みちるが形態変化の魔法を取得してからわずか五年で早くも一人前の魔女として胸を張れる程になっていた。


「…もう私から教える事は何もないわ、本当よう頑張ったなぁ」


みちるはマーリーから魔女の証の免許皆伝を頂いた。

もうこれでみちるは一人前の魔女になったのだ。

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