第14話 魔女のマーリー

マーリーはそんなみちるの態度を見てニコニコ笑いながら気さくに彼女に話しかけた。


「そんなに改まらんでええよ♪宜しくみちるちゃん」


「はぁ…」


まだ信じられないと言う風なみちるの態度にレイチェルは衝撃的な事実を告げる。


「こう見えて彼女は250歳だから」


「え…?えーっ!」


みちるは改めて彼女をじっと見つめていた。

どう見ても彼女の姿は10歳そこそこにしか見えなかった。


(これが魔法の力…?)


「今はこんな感じやけどもちろん絶世の美女にもなれるけんね」


マーリーはそう言うと一瞬でグラマーな美女の姿に変わった。

それはマジで魔法そのものだった。


「でも普段はこっちの方が好きなんよね」


そう言って彼女はまたすぐ幼い少女の姿に戻っていた。


その様子を見てみちるはごくんとつばを飲み込んだ。

こんな魔法が自分でも使えたなら自分も人の姿になってみんなを誤魔化せる…今の醜い姿を…。

あっ、これってもしかしたらある意味全人類が一番欲しがる能力なんじゃ…少なくとも女性は…。


「ふぅ~ん…悪くなさそうやねえ」


みちるが彼女の魔法に感心している間に彼女自身はみちるを観察していた。


「素質ありそうですか?」


レイチェルはマーリーにみちるの潜在的な力の有無を聞いてみた。

マーリーはまんざらでもない顔をしてこう答えるのだった。


「そうやね、悪くないもん持ってると思うよ」


どうやらみちるにも魔法使いの素質は眠っているらしい。

現役の魔女が言うんだからこれは間違いないでしょう…多分。


素質を見抜いたマーリーはみちるに話しかけた。


「どうする?早速修行する?それとも今日は休む?」


突然の提案に困惑してしまうみちる。

魔法の修行の話を聞いたのさえついさっきなのに心の準備が出来ているはずもなく…。


「あの…出来れば今日は休みたい…です」


みちるは少し申し訳なさそうに彼女にそう答えた。

その答えを聞いてマーリーは少しも気分を害する事無く明るい笑顔で返すのだった。


「分かった♪じゃあ明日からビシビシ行くよ!」


二人は家に案内されて今日一日は休む事にした。

魔女の家は中も可愛らしくまとめられていてすぐに和む事が出来た。


「ちっちゃい家でごめんねぇ~」


マーリーは家の奥の方でおもてなしの準備をしている。

そのカチャカチャという音を聞いていたらみちるはじっとしていられなくなった。


「あの、私何か手伝います」


みちるの申し出をマーリーはやんわり断っていた。

彼女はこんな事日常茶飯事と言った風で逆にみちる達の方を気遣うのだった。


「ええのええの!今日はお客さんなんやからゆっくり休んどき!旅の疲れもあるやろ?」


その彼女の言葉を受けておもてなしの準備が整うまでみちるとレイチェルは家の客間で大人しく椅子に座って待っていた。

それで時間も出来たし暇だったので何となく会話が始まっていた。

最初に口を開いたのはみちるだった。


「ところで二人はいつ知り合ったの?」


いきなりマーリーとレイチェルの出会いについて質問するみちる。

やっぱりまずは二人の関係に関心がいくものである。


「この仕事やってると色々あるんだよ」


「へぇ~」


何となく上手くかわされたような気はしたもののここまでそっけないって事は

この事についてはまだ深く話せる状況でもないのかなとみちるは思った。

なので質問の方向を変えてみる事にした。


「魔法使いの知り合いがいるなら早く教えてくれれば良かったのにぃ~!」


「そう言う流れにならなかったからね」


会話の方向変えてみたもののやっぱり会話は弾まなかった。

仕方ないので話の流れを今一番心配な今後の事へ…。


「魔法使いの修行って厳しいのかな?」


「どうだろう?案外楽勝かも?」


「だったらいいんだけど~…」


カチャカチャ…

と、その時美味しそうな匂いが二人の前まで漂ってきた。


「お楽しみの所かんにんな~♪」


何とか会話が弾みそうになった所でマーリーが料理を抱えて部屋に入って来たのだ。

美味しそうな料理が次々と二人の前に運ばれて来る。

あの小さな体でどうしてここまでのものがと感心するくらい沢山の料理がテーブルに並べられていった。


「お待たせ!大したものはないけど、どうか楽しんでや!」


ゆっくりくつろいでいた二人の前に素朴だけど暖かい森の恵みが沢山並べられた。

それはおもてなしの心が十分伝わる料理の数々。

マーリーの用意した全ての料理が揃った所で楽しい食事の時間が始まった。


「どう?美味しいやろ?」


料理を口に入れる姿をニコニコした顔で見ながらマーリーはみちるに話しかける。


「美味しいです!すごく!」


流石に自慢するだけあってマーリーの料理はとても美味しかった。

それはまるでその料理に美味の魔法がかけられているみたいだった。

彼女が魔女だけにそれもありえるけれど…しっかりと料理をした上での美味しさだとみちるの舌は感じていた。


食事を終えて、くつろいで、思い出話に花が咲いて…。

そうして楽しい時間はすぐに過ぎていった。

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