第10話 みちるの罪

辺り一面を焼け野原にしてこの戦いはピリオドを迎えた。

幸い二人の戦闘区域が市街地を離れていたお陰でかろうじて人的被害は免れていた。

しかし地形的には地図を大幅に書き換えなければいけないほどの大破壊が生じていた。



「…チェル!」


「レイチェル!」


あれからどのくらい経っただろう…。

大破壊のあった爆心地に2つの影があった。

それは魔物の姿になったみちると破壊の影響でボロボロになってしまったレイチェルだった。


レイチェルはみちるに抱きかかえられていた。

彼の意識が戻った事で涙をポロポロ流すみちる。


「良かった!生きてた!良かったよおうー!」


今まで聞いた事がない程の大声で泣いてレイチェルの無事を喜ぶみちる。

よっぽど彼の無事が嬉しかったのだろう。


レイチェルもみちるの無事が分かって安心していたがさっきまでの大戦闘の結果が気になってもいた。

みちるが無事と言う事はもしかしたら…。


「あいつは…?」


「うん、魔界に追っ払った!残念だけど勝てなかったよ…後もうちょっとだったのにな…」


テヘヘと笑うみちる。

姿は魔物になってしまっていても雰囲気は以前と変わっていなかった。

その事に安堵するレイチェル。


「結局君をそんな姿にさせちゃった…そうならないように頑張っていたのに…」


「いいんだよ!背に腹は代えられないよ!」


そのみちるの言葉にちょっとあっけにとられるレイチェル。

みちるらしい返事だなとは思ったけど思わず突っ込まずに入られなかった。


「えっと、その言葉ってこう言う時に使うものだっけ?」


「こんな時にそんなのどーでもいいじゃんかー!」


危機が去って気の緩んだ二人はいつもの様に何でもない会話を楽しんでいた。

やっと戻ってきた平穏に緊張感も解けきっていた。

場が落ち着いたところでみちるはレイチェルに質問する。


「それでこれからどうしようか…」


「そうね、あなたはこれから天界に来てもらいます」


みちるがレイチェルに今後の事を相談しようとした時、背後から別の誰かがみちるに声をかけてきた。

その声の主はレイチェルと同じ天使の姿をしていた。

って言うかそれは新しく現れたレイチェルとは別の天使だった。


そしてその天使は女性の天使だった。

服装は何だか警察とが軍隊のあんな感じのパリっとした威圧感をもった服装で見た目から見てもレイチェルよりかなり上の位だと分かるほどだった。

スタイルもバッチリで見た目がちょっと幼いレイチェルに対してかなり大人っぽかった。

そしてその女性天使は冷酷な声でみちるに告げる。


「あなたを連行します」


みちるはその天使から力を抑える天使の輪と同じ効果のある光の手錠を素早くかけられた。

手錠をかけられたみちるは魔物の力を封じられてしまった。

以前ならこれで人の姿にも戻れたかも知れない。

しかし完全魔物化したみちるは何も変わらず魔物の姿のままだった。


「どこにつれていく気!」


みちるはこの突然の仕打ちに女性天使に抗議した。

その声を受けて女性天使は冷静に少し低い声でこう答えるのだった。


「決まっているでしょう!天界監獄です!」


その一連のやりとりにレイチェルは何も出来なかった。

あまりの的確で素早い行動に一言も口を挟む事が出来なかったのだ。


そしてみちるは天界の監獄に収監されてしまった。

地上を大いなる混沌と混乱に導いた罪で。

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