第9話 暴走するみちる
シュウウウ…。
みちるの体から湯気が登り始める…。
みちるの身体から魔物の力が開放されていく…。
「こ、これは!」
ギリュウはその急激に膨張するみちるの力に思わず彼女を握っていた手を開いてしまった。
それは魔界四天王ですら驚愕するほどの力の暴走ぶりだった。
「まさか彼奴の魔物因子がこれほどまでに覚醒しているとは…っ!」
(覚醒じゃない…あれは暴走だ…!)
変わり行くみちるの姿を見ながらレイチェルはそう感じ取っていた。
今まで人が魔物に変わった事例は聞いた事がない。
おそらくこれが史上初めての人から魔物への変容だった。
みちるの体は今まで抑えつけられていた力が急に開放されてとんでもない熱量が発生していた…。
そしてそんな彼女の姿が段々と変わって行く…その力を出す者に相応しい姿に変わって行く…。
「ふふ…力が溢れてくる…これが新しい私の姿ね…」
急激に膨れ上がる自身の力を感じて余裕が生まれるみちる。
これなら目の前の最強の敵ともまともに渡り合える気がしていた。
みちるのギリュウに対するその態度の変化に彼の怒りが頂点に達する!
「たかが力を開放した程度で!死ねぃ!」
そこからのギリュウとみちるの戦いは苛烈を極めたものになった。
力を開放したみちるは何とギリュウと互角の戦いを繰り広げていた。
エネルギー攻撃の遠距離戦についで肉弾戦の接近戦闘。
ものすごいスピードの攻防戦にレイチェルの認識が追いつかないほどだった。
「まさかここまでだなんて…」
二人の戦闘にレイチェルは手も足も出なかった。
むしろみちるの邪魔にならないようにあえて戦闘中の二人から距離を取らねばならないほどだった。
力を放出する事に喜びさえ見出すほどのみちるの顔は普段見慣れていたぐーたら好きの以前の彼女と同一人物とは思えないほどだった。
一方のギリュウもこの戦闘に戦いの喜びを見出しているようだった。
「有り得ない!有り得ないぞおっ!」
「何がよっ!」
激しい戦闘を繰り返しながら会話を楽しむ二人。
「元人間のお前がこの私と同等などとっ!悪い冗談だっ!」
「貴方バカねっ!私の方が上よっ!」
「ほざけっ!」
もはやこの戦闘を目で追う事は不可能で聞こえてくる音と気配だけでレイチェルは二人の戦いを見守っていた。
魔界四天王が…天使長クラスでないと相手にならない程の存在とみちるが今ここで互角の、いや、それ以上の戦いを繰り広げている…。
この戦いの結果がどう転ぼうと最後までしっかり見届けようと誓うレイチェルだった。
「お遊びはここまでにしておくか…」
「そうね、そろそろ終わりにしましょ」
二人の動きが一瞬止まってやっとレイチェルにも彼らの姿を確認する事が出来た。
今からの攻撃がお互いの最後の一撃になる…。周りの時間が静止したように静まり返った。
「みちるスペシャルフルバースト!」
「魔導破戒断!」
2つの大きな力がぶつかった…。
その強大な力の衝突にレイチェルはふっとばされてしまった。
空間に大きな歪みが生じる…。
二人の戦いで生じた次元振動は天界にも魔界にも響き渡る程だった。
ふっとばされたレイチェルはその瞬間意識を失ってしまった。
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