第7話 獄炎のギリュウ

彼は不敵な笑みを浮かべながら悪役の定番の例のセリフをつぶやいた。


「うわさに聞く魔物魔女の実力とはその程度か?」


ムキーッ!

みちるはその安い挑発に乗っていた。


「わたしの実力はこんなもんじゃないんだからねっ!」


みちるは全エネルギーを集中させにギリュウ向けて次々に発射した。


「みちる波動拡散殲滅ビーム乱れ打ちスペシャルリミテッドエディショーンッ!」


みちるの手から無数のエネルギー弾がに向かって放たれる!

無尽蔵と言えるほどの強大なエネルギーが次々に放たれ続け、それがギリュウに命中したであろう爆音は響き続けた。


でも実はこれ技の名前とか適当なんですけどね(汗)。

何だか強そうな言葉を名前にすると強いイメージが乗っかって強いエネルギー弾が出せると言うみちるが適当に決めた設定なのだ。

今まではこれでみちるが倒せなかった魔物はいなかった。


って言うか、ここまでしなくても最初の軽いみちるビームで今までの魔物は一撃で消滅していた。

ギリギリの攻防で死力を尽くして戦う激戦の経験をみちるはまだ経験した事はなかった。

それほどまでに今までみちるは魔物に対して強かったのだ。


自分の出せる全エネルギーを使い果たしたみちる。

ここまで来ると流石の彼女も肩で息をしていた。


ハァ…ハァ…


「ど、どんなもんよ!」


ドヤ顔でレイチェルの方に振り向くみちる。

その顔は疲れと安堵に満ちていた。

しかしレイチェルの顔は硬直したまま…。


「あれ?」


労いの言葉を期待していたみちるは彼のその顔に最悪の結果を直感していた。


ヌウーッ!

ガシッ!


その瞬間、噴煙の中から伸びる手がみちるを鷲掴みにした。


「!!!」


「みちるっ!」


さっきのみちるの攻撃に多少のダメージは受けていたようだが

ギリュウはほとんど無傷だった!


「さっきのはちょーっと痛かったぞ?中々やるじゃないか」


ニヤニヤしながらみちるを握りつぶそうとするギリュウ。

悪役だ!ギリュウさんベッタベタの悪役さんやでぇ!


「ちょっ、離せ!離してぇ!」


捕らわれのヒロイン状態のみちる…もはや彼女には為す術がなかった。


「さあ天使、貴様はどうする?」


ギリュウの攻撃の対象が今度はレイチェルにも向けられた。

元々魔物と天使は敵対する関係。

このままではレイチェルの命もないのと同然だった。


「勿論最後まで戦うさ…ただその前にみちるを離せ!」


覚悟を決めたレイチェルがギリュウと対峙する。

その彼の瞳をじっと見つめるギリュウ。


「ほう…いい顔をしているな、覚悟を決めた顔だ…だがこいつを離す事は出来ん!」


ぐっと唇を噛みしめるレイチェル。

ここで自分が変な行動を取れば間違いなくみちるの命はない。


辺りに緊張した時間が流れていた。


それは周りから見ればほんの一瞬の出来事だったかも知れない。

しかしこの状況の中でその一瞬は果てしなく長いものに感じられた…。


「さて、まずはこいつの断罪を始めよう」


ギリュウはそう話すと同時に握っていたみちるに攻撃を始めた。

身動きの取れない彼女に強烈なエネルギーが襲う!


「キャアアーッ!」


その攻撃に悶え苦しむみちる。

その状況はレイチェルを動揺させるのに十分だった。


「や、やめろっ!」


苦しむみちるの姿を見て思わず声を上げるレイチェル。

ギリュウはその様子を見ていかにもな悪役笑いを見せながら答えるのだった。


「それは出来ないなぁ…」


「ぼ、僕ならどうなってもいい…っ!」


みちるの苦しむ顔を見たくないレイチェルはギリュウに話を持ちかける。

それは自分が犠牲になってでも彼女を助けたいと思う心からの行動だった。


「ほう…?」


ギリュウはレイチェルのその提案に少しだけ力を弱めた。

しかしみちるへの攻撃を止める事はなかった。


「だ、ダメよ!」


レイチェルの提案を止めるみちる。

ギリュウの攻撃を受けながらまだ意識は保っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る