第4話 突然の魔物
そんな訳で、家でじっとしていてライフゲージが減るばかりなので二人はいい事をする為に出かける事に。
「ところでさぁ」
みちるが天使に話しかける。
そう言えばまだ大事な事を聞いていなかった。
「君は何て呼べばいいの?」
そう、ここまで会話していてみちるはまだ天使の名前を聞いていなかったんだ。
うんうん、会話するには相手の名前を知らなくちゃね。
「僕の名はレイチェル」
天使の名前はレイチェルと言うらしい。
それっぽいと言うかぽくないと言うか…。
取り敢えずこれで会話は楽になった。
「レイチェルはずっと私の側にいてくれるの?」
早速みちるは昔からの友人のようにレイチェルに話しかけた。
こう言うところがみちるのいいところの一つである。
勿論レイチェルもそれに悪い気はしていない。
「そのつもりだよ」
レイチェルもまた普通に答えていた。
その彼の答えにみちるははたと気付くのだった。
この腕輪は元々レイチェルの持ち物?だったと言う事に。
「あ、そっか、この輪っかって元々君のだもんね」
「そもそもこうなったのは僕の責任だから」
レイチェルのその答えにみちるは感心しながら話を続けた。
「ふーん、案外真面目なんだ」
「天使だからね」
二人がそうやって話しながら歩いているとついに第一村人発見!
さて、なんて声をかけようかな?…って、違~う!
目的は人助けだって話だよっ!
しかし最初に見かけた人は特に困ってはいないようだった。
あれま…これは外れだねぇ。また別の人を探さないと…。
みちるがちょっと落胆していたその時、彼女の目にはその人以外にも何かが見えた…気がしていた。
その見えた気がしたものはまるで伝説で聞く魔物の姿そのもの。
ちょっと怖くなった彼女は恐る恐るレイチェルにその話を振ってみた。
「あ、あのさ…」
「うん?」
「もしかしてだけど…あそこに魔物とかいたりしない?」
「いるね」
レイチェルはあっさりと魔物の存在を認めた。
つまりあの魔物は本当にそこにいるのだ。
魔物の天敵の天使が言うんだから間違いない。
「何でか見えるようになったんだけど私」
「身体が魔物体質になった影響だね」
レイチェルの話によると魔物を食べたせいでみちるにも魔物が見えるようになったと言う事らしい。
これからはずっとあんなのを見なくちゃいけないなんて…何て厄介で迷惑な話…。
目の前にいる魔物はまだ二人に気付いていないらしく辺りをただウロウロしていた。
しかし一体何がしたいんだあの魔物は…。
「危なくないのアレ」
「まあその内悪さするかもね」
みちるの心配の言葉にしれっと答えるレイチェル。
彼にはこの魔物の事は結構どうでもいい存在らしい。
「ほっといてもいいの?」
「あの程度なら問題ないよ」
もしかしてこの魔物はそこまで危険なものではない?
しかしみちるは初めて見る魔物の姿に警戒心しか抱けなかった。
だからこそこのレイチェルの態度に違和感すら覚えるのだった。
「マジか…」
みちるは若干ドン引きしていた。
ついさっきまで存在を否定していた天使や魔物が本当は当たり前に存在していたなんて。
そして魔物に対する昔話を思い出していた。
確か魔物を退治する事はいい事で、魔物退治で一国の王になった話とかあった気がした。
もしその昔話が事実だったとしたら!
そこで彼女はとっておきのアイディアを思いついた。
「あのさ…」
恐る恐るレイチェルに質問するみちる。
この質問が馬鹿げていたら笑われるかとすら思った。
それでも聞いてみない事には話は進まない。
だからこそ出来るだけ軽い冗談っぽく彼に話しかける事にした。
「ん?」
「あの魔物倒したら善行した事にならない?」
これはみちるの中でも結構な賭けたっだ。
どうか笑い飛ばされませんようにと心の中で祈るみちる。
これでもし自分の考え通りならば地味に毎日いい事をしなくて済むはず…。
みちるは期待しながらレイチェルの言葉を待った。
「ならない事はないけど」
「ヨッシャ!」
思わずガッツポーズを取るみちる。
彼女の考えはどうやら正解のようだった。
いちいち誰かを助けるなんて事をしなくても魔物さえ倒せば魔物にならなくて済む!
倒す方法さえ見つかればこっちの方がきっと断然楽なはず!
みちるは体質が変わったというレイチェルの話からもしかしたら今の自分なら魔法みたいなのが使えるようになっているかもとか思っていた。
それでダメ元で魔物に向かって手をかざして魔法が出る様子をイメージしてみた。
「みちるビーム!」
みちるは魔物に向けてそれっぽい言葉を叫んでみた。
するとみちるの手から謎の怪光線が発射されて魔物に見事に命中。
ビシュム!
魔物は断末魔の叫びを上げる間もなく一瞬で消滅した。
みちるのこの攻撃で余りにも簡単にあっさりと魔物は消えてしまった。
「出来ちゃった」
思いつきの行動がまさかの大成功でみちる自身もびっくりしていた。
こんなにうまくいくなんて人生って楽勝だね。
ただ、驚いていたのはレイチェルも一緒だったようで。
「マジか」
レイチェルもみちるの行動に驚愕していた。
理論上ありえない話ではなかったがまさか実際に目にする事になるとは。
「私、魔法が使えるようになってる!」
「いやそれ、魔物の力だから」
喜ぶみちるに対し冷静に突っ込むレイチェル。
原理としてはこう言う事らしい。
みちるの力は天使の輪が抑えてはいるがいくらかは抑えきれずに漏れ出している。
その漏れ出した魔力をみちるは具現化する事が出来るようになっていた。
ちなみに天使の輪の抑える力を調整すればもっと強力な力も出せるようになる。
しかしそれは諸刃の剣でやり過ぎるとみちるの魔物化も進んでしまう。
「だから、無茶したら駄目だ」
「私、魔法少女になっちゃったよー♪」
レイチェルの話をみちるは全然聞いてないようだった。
自分が特別な能力を身につけた事に有頂天になっていたのだ。
「…って言うか少女じゃないじゃん」
レイチェルの冷静なツッコミ!
その言葉に敏感に反応するみちる。
「まだ私24だし!」
みちるは四捨五入するとまだ二十歳と言いたいらしかった。
20代で美少女なんて呼んでもらえるのは極一部の限られた業界くらいのものなんだけど…。
その年齢を聞いてレイチェルは冷静なツッコミをみちるに返した。
「じゃあ魔女だな、魔物の力を使うからさしずめ君は魔物魔女だ」
「何そのセンスの欠片もない呼び方!魔法少女は女の子の憧れなの!」
レイチェルの言葉に憤慨するみちる。
やばい!地雷を踏んでしまったかなと彼は思った。
本当はここで「だから君はもう女の子じゃないじゃん」と話を続けたかったものの
ここで言い合いしても不毛な争いになるだけなのが見えていたので黙っている事にした。
みちるはと言えば自分の特別な力に酔いしれて力が使えるこの状態も悪くないなと思い始めていた。
そこからみちるとレイチェルの魔物退治の日々が始まった。
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