第3話 突然の真実
「魔物をその身に取り入れると…早い話が魔物になっちゃうんだ」
さらっと衝撃的な事を言う天使。
えっと、魔物になっちゃう?魔物を食べたから今度は自分が魔物に?
天使のその答えはみちるにとって到底受け入れ難い言葉だった。
「私が?」
「そう」
「マジで?」
みちるは念を押して聞いてみたが結果は同じだった。
「だからその腕輪でそれを抑えてる」
つまりはそう言う事だったのだ。
だったらそれならそれでもっと早くに言ってくれればいいのに。
でもこの腕輪がそうならないようにしているなら一安心だった。
安心したついでにもう一つ質問を続けた。
「で、これってすぐ治るの?」
「無理。手遅れ」
いきなりのきつい天使の返事。
ちょっと待って、この目の前のは本当に天使か?
天使がこんな心のこもってない受け答えをするのか?
このやり取りの中でみちるの中の天使像がガラガラと崩れていった。
ただ、落胆しても仕方ないので質問を続ける事にした。
「な、治らない訳じゃないよね?いつかは治るんでしょ?」
「多分半減期で50年は…」
「は…?」
半減期…どこかで聞いた事ある言葉だなと思いながらみちるは頭の中で計算してみた。
半分になるのが50年って事は全部消えるのには倍の時間がかるのかな…。
「じゃあ100年つけっぱなし?」
「問題はそこだけじゃないんだ」
「?」
天使はさらに条件がある事を付け加えた。
まだ更に何かあるのかと思うとみちるはちょっと頭が痛くなって来ていた。
もういい加減にして欲しかった。
「そこに緑のゲージがあるだろ?」
それは腕輪に付いている緑色のゲージの事だった。
きれいな緑色だなあとは思っていたけどやっぱりただのデザインじゃないようだった。
まじまじとそのゲージを見つめるみちる。
「あ、これね…、これが?」
「このゲージが切れたら効果切れるから」
またも衝撃的な一言。
何だかね、この天使まるで余命宣告する医者だよ。
人の心が、思いやりがひとつもないよ。
冷酷魔人だよ。あ、魔人じゃなくて天使か。
「え?」
「それ、地上の機械で言うところの充電ゲージみたいなものだよ」
「って事はもしかしてこれが切れたら…」
「力が暴走して君は魔物になるね」
ドッギャーン!
とんでもない事をさらっといますなあなた。
さすが天使!血も涙もない!
天使だから人の気持ちは分からないのか?
それにしてももうちょっと言い方ってものが…。
「で、このゲージって満タンでどのくらい持つの?」
天使のその言葉にショックを受けながらも腕についた天使の輪をまじまじと見ながら質問を続けるみちる。
今の彼女にはこの緑のゲージがまるで自分のライフゲージのように見えてくるのだった。
そんなみちるの気持ちを知ってか知らずか天使は相変わらず冷静に淡々と彼女の質問に厳しい現実を伝えた。
「満タンで一日かな…このままだと多分明日の今頃には切れるね」
「…え…っ?一日って…えっ?」
その言葉を聞いてみちるは目の前が真っ白、いや真っ暗になった。
でもだとしたら天使のこの行為はたった一日延命するだけの無意味なものと言う事になる。
目の前の天使がそんな無駄な事をするような性格にはとても思えなかった。
彼の「このままだと…」と言う言葉にみちるは最後の望みを賭けてみる事にした。
「で、でも勿論これを充電?する方法とかあるんだよ…ね?」
「善行…つまり人助けをすればゲージは戻るよ」
一応救済措置はあるようだ。
これで何とか一安心、ではあるのだがそれはみちるにとって厳しい選択だった。
何故ならみちるはそんなに人助けが得意ではなかったからだ。
少しでも暇な時間があればぐーたらしたい、それがみちるの本性だった。
「マジで…?それじゃあこれからはボランティアしまくらなきゃいけないって事?」
「だね」
「ずーっと一生人助け?」
「そ」
みちるは目の前が真っ暗になった。
希望はない…いや、ない訳じゃないけれども…。
これからずっといい事をし続けないと自分の体が魔物に変化してしまう…。
普段ぐうたらなみちるにとってそれはとんでもない拷問にすら思えるのだった。
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