Sixth day

魔獣を手なづけろ 01

は、 またか。 意識が反転したと思ったら部屋の中に放り込まれている。

このパターン何度目になるのか。


 気分が落ち着いてきた所で周囲を見渡すと、左側には女性が二人、右側には男性一人がいる。 おお、俺の他に人がいる!

ちょっと、待てよ。 ちょっと前の夢ってどうだったっけ? 誰かいたような……?


「うわぁ、なんか入ってきたぁ」バリトンボイスの男性が上ずった声を上げる。


部屋の対面に当たる壁が、ズズッとずれて部屋に何か入ってきた。

む、ライオン? たてがみが逆立ちがっしりとした体躯の生き物が、そこにいた。 あ! 魔獣だぁ!

その隣にが。


「美女と魔獣なら……よかったのに」落胆したように、美しい胸の人がつぶやく。

「あれって魔獣なんですか? 思ったより可愛いかも」と、ポニーテールの女性。

「意外にマッチョな体型なんですな」とバリトン兄さん。

「え? そこに目が行くの!」思わず、俺は突っ込んでいた。


『魔獣を手なづけろ。すれば道は開くだろう』冷ややかな口調の声が、頭に響く。


倒すんじゃないのか、手なづけろ? どういう事?


この部屋は、今までより大きいよな。 バラエティ番組でよく見る豪邸の40畳クラスのリビングって感じか。


魔獣の方を改めて見直す。

隣のマッチョマンが魔獣を手なずけている? え、魔獣ってなつくの?


「あ、立った!?」びっくりしてつい、声を出していた。


のそりと自慢げに腹を見せるかのように立ち上がる、ライオンのような魔獣。

「どうだ、俺様はでかいだろう」、と聞こえたような気がした。


たしかに大きい。 マッチョマンの2倍くらいの背丈がある。 胸回りは3倍はあるんじゃなかろうか。


 そう思った瞬間、魔獣が俺の方を見て、せせら笑いを浮かべやがった。

自慢したいのか? そう思いながら様子を見ていると、マッチョマンは 魔獣を見て、あっちいけって動作をした。 ひょっとして、マッチョマンってサモナー召喚師

魔獣は、無視してどんとその場で動かなくなる。 あれ? やる気なし?

それを見た、マッチョマンサモナーさん、蹴りを入れてるよ。


「ありゃ、なにやってんだ?」

魔獣はその尻尾を振り回して、マッチョマンサモナーさんの頭ポコポコ叩きまくってる。


「なぁに、あれ?」と、爆乳姐さん。

「相手は私たちでしょ?」と、ポニテ姉さん。

「ちょっと、安心しました」とバリトン兄さん。


「とりあえず、解放条件確認しますかね」と、俺。


とりあえず、出口らしきドアに走って、ボタンを押してみた。


「えーっとマッチョマン、あのままでいいんですか?」バリトン兄さんが問うてきた。

「どうやら、あの魔獣を召集したサモナー召喚師みたいだから、ほっておいても大丈夫ですよ」

「やっぱり、手なづけないと出られないみたいね」落胆する爆乳姐さん。

「見たいですねぇ」と、ピクリともしない出口を見て、残念そうに返した。


「あ、魔獣さんがこっちに来ましたよぉ」と、慌てるポニテ姉さん。


 「え? なんで?」と、見るとマッチョマンサモナーさんがいなくなってる事に気づく。


「ど、どうしましょう」とバリトンさん。

「手なづけないとどうしようもないんだし。とりあえず、鞭とか探してみましょう」

「ねぇ。 みんなで集まってるより、ある程度 距離空けてけた方がよくない?」

「爆乳姐さん、ナイス!」口に出した後にしまった、と思った。


「ちょ、あんたこんな時になんてこと言うの! そんなに私、胸大きくない!」

「あー、済みません」褒めたつもりが、怒られるとは、とほほ。

「それより一緒の方がよくないですかぁ」ポニテ姉さん、フォロー有難う。

「ポニーテールさんの言う通り、ここは全員で行動する方が、よくないですか?」

バリトン兄さんが力説してる。


そんなやりとりの中、魔獣が襲ってくる気配がないのに気づく。

毛づくろい始めてるよ、なんで? 「あれ見て、みんな」


「くつろいでますねぇ。 あれなら、なんとか手なづけそうな気がしますが」

「うん、イケそうな気がしてきたわ、あれなら」

「かわいいですぅ」


ん? 「バリトンさん、あれなんだか判ります?」

さっきまで、マッチョマンサモナーさんがいたとおぼしき場所を指して聞く。

「ちょっと見てきます。魔獣の様子見てて下さい」

そういうと、魔獣の位置を確認しながら部屋の壁沿いにゆっくり回り込んでいく。

「おお、行動力あるねぇ」爆乳姉さんが感心してる。

「バリトンさん、ガンバです」ポニテさんがガッツポーズした。


やるなぁ、バリトンさん……


「鞭、かな。 これがありました」手にした物を見せてくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る