貴方の思いをキスで表現せよ After (3/17改稿)
「あー、キスし損ねたぁ」
清楚な先生役の町田研究員が残念そうにデバイスを外しながらぼやく。
「まぁ、仕方ないか。あの状況ではなぁ」
隣でデバイスを外していた玉川主任は、「私も……したかった」
「感情を抑えきれませんでした。済みませんでした、主任」
鶴川研究員が頭を下げる。
「まさか、君があんな反応するとは思わなかったよ」
主任は銀縁メガネをかけ直し、「顔をあげなさい」そう続けた。
「彼、ロマンチストな面がありますよね、主任」
「ああ、意外だな。 女性に対して過去にトラウマがあるのかもしれないな」
「うわぁ。 思い出しただけでも恥ずかしい」
玉川上司と町田研究員は、鶴川研究員をスルーする事にしたようだ。
「それはともかく、彼の好みが見えたのが興味深いです」
「私も同意見だね。彼と同じ研修グループのポニーテールの女性だろう?」
「でか乳女なんかに彼はやれません」そう言った途端上司に頭を殴られる。
「鶴川君は、猛省を促す事にしようか? これでは仕事を外すしかないな?」
「今回は、同一空間における夢の共有が主目的なので、その、あの……」
「どうした? はっきりいいたまえ」
「今後日常生活の方で色々変化が起きると思われるので……、あの……」トーンが落ちていく。
「顔が引きつってるわよ、大丈夫?」
「ほんとに、彼が気になるみたいだな。しかたない、鶴川くん」
「はい、玉川主任なんでしょうか」
「しばらく、被験者No000125の監視役を務めてもらうこととする、いいね」
「はい、了解しました」ぱ、っと嬉しそうな表情になるジャージ先生。
「あら? そんな笑顔はじめてみたわぁ」
「乙女心となんとやら、ってか。 とうとう鶴川君にも春到来か」
「からかわないでくださいよぉ。 うう…… 穴があったら入りたい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます