絶壁からの生還 After
「ふぅ。VRであそこまで再現できるとは、見事なものだ」
「彼の夢の中はどうでしたか、主任」
開発部屋に戻った彼女は嬉しそうに
「そうだな。 リアルさの中にも現実的でない嘘を適度に混ぜるべきだと実感したよ」
「といいますと?」
「自衛隊の服装などがわかりやすいかな?」
「どう変えたらいいのでしょう?」
「今、嘘を適度に混ぜろといったばかりだろ、自分で考えたらどうなんだ」
「服装を変えろと、言うのですね。 現実でない世界の自衛隊…… は!
例えば、あの迷彩調の色を、カラフルで派手な色にするとか」
「そうそう、いいねいいね」
「見た目は自衛隊だと認識しても、現実ではありえない服装ですし。 ああ!」
「何が浮かんだのかな?」
「ヘリコプターの形や色彩なども、デフォルメしたりもいいですよね。 奥行きのない板が動いてるとか」
「なかなか、良い発想をするじゃないか。そういう事だよ、夢の中なんだから」
「なんか、いろいろ考えるのが楽しくなってきました」
「妄想も大事な要素だからな。 今気づいた点を早急に開発陣の方へフィードバックしてもらうか」
「はい、わかりました」
「話は変わるが、これからの日常での非現実夢とVR世界の夢の構築にも一工夫しようと思う」
「フェーズβへの移行のために、ですか」
「うむ、そうなる。 むしろ思い切り変えていく必要があるだろう」
主任、と呼ばれる彼女は何か思うところがあるのか。さらに続けて、
「今回、彼に接触して思った事だが何かに気づいたようにも見える。 私自身が考えている事と同じなのかは、彼の行動を注意深く観察していく必要があるな」
「具体的にはどう対応したらいいのでしょう?」
「日常生活は、今まで通り普通でいい。 ただ、試験中は非現実感を常に意識させ集中させる事だ。 違和感を被験者に与えない、それに尽きる」
「それは、例えば風景やアイテムなどに、PRGやADVなどのゲーム的な要素を更に盛り込むなどでしょうか」
「分かり易くいえばそうなるな。そうしないと、今見ている世界は夢の中と感じられなくなる可能性がある」
「それでは、今の点を簡潔にレポートにしてまとめ、開発陣にその旨伝えます」
「ああ、よろしく頼む。 あと、彼の日常の行動も監視を続けてくれ。 逃げ出すということはないと思うが、気になるのでな」
「了解しました」
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