第4話墓地での攻防

「ケーリー、僕は君を行かせる訳にはいかない!」


「フオオオオ!」


もはやケーリーには誰の言葉も届かなかった。

怒りで完全に正気を失ってしまっていたからだ。

ケーリーがすごい勢いで僕に襲いかかってくる!

猫特有のしなやかさで素早く避けたもののいつまでも攻撃を交わせるかは分からなかった。


「さて、私は空から高みの見物と行こうかねぇ…」


魔女は戦いが始まるとどこか遠くに飛び去ってしまった。

それはこの戦いのとばっちりを避けるためだったのかも知れない。

けれどそんな事を考える余裕は今の僕には全然なかった。


「ウオオオ!」


悪霊化したケーリーの攻撃は鋭く、いつの間にか細かい傷をいくつもつけられてしまった。

傷から流れだす血をぺろりと舐め、何とか適度な間合いを保つ。

僕はケーリーを絶対街に近づけてはいけない…ただそれだけを考えていた。


「ガアアアッ!」


ケーリーの拳が超高速で迫ってくる!

その時ちょうど僕は足を滑らせてしまった。

しまった!やられるっ!


「ギャアアアッ!」


僕が覚悟を決めた時、何故かケーリーが悲鳴を上げて倒れていた。


「何やってんのよ!貴方本気!?」


僕の危機を察してリサが助けに来てくれたのだ。

流石頼りになるシロネコガール!

彼女のお陰で僕は何とか一命を取り留めた。


「貴方の爪にも退魔の力は宿っているでしょ!何で使わないの!」


リサの言葉が胸にズシンと響く。

けれどケーリーをこのまま倒すのは何か違う気がしていた。


「彼はちょっと混乱しているだけなんだ!だから!」


「何か策があるって言うの?だったら早くして!反撃が来る!」


ケーリーはすぐ起き上がって今度は標的をリサに変えて襲い始めた。

リサの為にも僕は早く対策を考えなければならなかった。


一度悪霊化したお化けを正気に戻すのは難しい。

でもケーリーの場合は本当の事をちゃんと思い出せなていないだけ…。

その隙を魔女たちに利用されただけ…。


それに僕はケーリーと言う名前を何処かで見た覚えがある…。

何とか記憶を手繰り寄せて整理する事数分、鈍い頭がようやく答えを導き出した。


(そうか!もしかしたら!)


僕は何とかケーリーの注意をこちらに向けなければと思った。

だから少しだけケーリーに傷をつけて注意をこちらに向ける事にした。


シャッ!


僕の退魔の爪がケーリーの頬をかすめる。

案の定、ケーリーは僕に意識を向けてきた。


「こっちだ!ついて来い!」


僕はケーリーについて来いと促すと一目散に走りだした。

そう、あのとっておきの場所へと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る