第3話魔女の企み

「さあお化けさん、自分の墓を探してごらん」


魔女はそう言ってお化けに自分のお墓を探させた。

街の共同墓地、住人の誰かが死んだなら必ずここにお墓があるはずだった。


「えっ?えっ?」


迷いお化けはそう言いながら自分のお墓を探し始めた。

でも自分の名前も忘れてしまっているお化けに自分のお墓なんて探しようもなかった。


「僕はなんて名前だったの?どうして死んじゃったの?」


混乱する迷いお化け、魔女に言われたままにお墓を探そうとするものの頭を抱えるばかり。

そこで魔女はニヤリと笑いながら困っているお化けに助け舟を出す。


「お前の名前はケーリーだよ。名前を思い出せばみんな思い出せるだろ?」


お化けの名前を教える魔女、そこに今回の魔女の企みがあるようだった。

わざわざ困っているお化けを助けるような事を魔女がするはずがない!

僕は魔女に怒りの抗議をする。


「名前を教えて何をするつもりだ!それに彼は本当にケーリーなのか!」


「おや?私の言葉を疑うつもりかい?ケーリーはどうやら思い出したようだよ?」


僕が魔女に企みを問い正そうとしていた時、お化け、ケーリーの身に異変が起こっていた。


「僕の名前がない…僕は…僕は…」


名前を思い出したケーリーは必死に自分のお墓を探していたのだ。

そしてその行動が実を結ばなかった事にショックを受けていた。

その結果を聞いて勝ち誇ったように魔女は決定的な一言をケーリーに告げる。


「そうさ、あんたは墓も作ってもらえなかったんだ!誰からも愛されてなかったんだよ!」


魔女の言葉が傷心のケーリーにさらに追い打ちをかける。

やばい!

ケーリーの心に憎悪が広がっていく…このままでは彼は悪霊になってしまう!


「ケーリー、落ち着くんだ!ここに墓がなかったとしても…」


「うるさい!お前なんか大嫌いだ!」


ケーリーは中途半端に記憶を思い出し、そして街の人々に対する悪意を膨らませていた。

そう、彼は悪霊になってしまったのだ!

悪霊は人々を混乱に陥れ、不幸を呼び込んでしまう!


「ふふふ、そうだよ…自分を愛してくれなかった街の住民なんか呪ってしまえばいい!」


ケーリーを煽りに煽る魔女。

怒りで我を忘れたケーリーはみるみる巨大化していく。


「そうか!これが目的だったのか、最初から!」


僕はやっと魔女の目的に気が付いた。

彼女は高笑いしながら今回の企みについて話し始める。


「そうさ、境界の門にこいつをおびき出したのもこの私さ…本当にうまく動いてくれたよ」


魔女ならば報われないお化けを操る事も簡単だ。

最初にケーリーを見つけた時に気付くべきだった。

これは完全に僕の誤算だった。

だからこそここで彼を止めるしかない!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る