第1章~淡い、春よ~ 1

「それでは、加代の一時帰国と結婚にかんぱーい!」


「かんぱーい!」


カチリ、カチリ、と五つのグラスが重なりあって、中の飲み物を一口ぐっと飲み干すと、私たちは互いに顔を見合せ微笑みあった。


私、一戸直子と、今日の主役の加代。それから、かおちゃん、杏里、みさっち、美花は、高校時代の仲良しグループ5人組で、全員が揃うのは本当に久しぶりだ。


間もなく三十路になろうとしていても、こうして顔を合わせれば、もう十数年前の出来事がまるで昨日のことのように思いだされる。


私たちは、よく食べ、よく飲み、息継ぐ間もないほどよく喋った。


もちろん、話の中心にいたのは加代だ。


加代は高校を卒業した後、アメリカの大学へ進学し、そのまま現地で就職。私立高校で日本語教師として働いていた。


そして、このたびめでたく結婚が決まり、報告も兼ねて帰国したのだ。

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