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聡から(今夜は熊と飲んでくるよ)とラインが入ったのは、スーツを新調した翌週のことだった。


熊というのは、聡の大学時代からの友人で熊谷剛君という。


名前の通り熊のように大きな体をしていて、私立高校で社会科を教えている。幼い頃から柔道を習っていて、柔道部の顧問でもある彼を私は熊ちゃんと呼んでいる。


図体の大きな熊ちゃんと痩せた聡が並ぶと、まさに凸凹コンビなのだけれど、二人は仲がよかった。きっと、熊ちゃんは聡にとって親友なのだろう。


若い頃は、熊ちゃんとその当時の恋人と、私と聡の四人で遊んだこともある。


熊ちゃんも聡と同じくらい優しくて、だからだろうか。優しすぎるという理由で、女の子によくふられていた。ふられた熊ちゃんを慰めたのも一度や二度じゃない。


そんな熊ちゃんはいまだに独身で、現在は恋人募集中だという。


聡は私との結婚に腹をくくったことを熊ちゃんに一番に報告し、今夜はそのお祝いをしてくれるようだ。


(楽しんでおいで!)


私はラインを返信し、明日の現場であるデパートの催事場の設営に戻った。


明日からこのデパートでは全国駅弁フェアが開催される。


その現場責任者が私で、バイトのおばちゃんに指示を出したり、デパートの責任者と最終打合せしたり、取材に来るマスコミの対応に終われたり、てんてこまいだった。


だから、しばらく夜ご飯は駅弁にしようなんて、呑気なことを考えていた。

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