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「え?なんで?」


「いや、ナオさ、飲んで帰ってくると必ず小腹がすいたとかって何か食べるでしょう?だから、買って来たんだ。散歩がてら」


聡が弱ったように笑った。


あぁ、それで、か。


そこで私は、おじさんが、さっきなぜあんな反応をしたのか理解した。


私と聡は二人でよくあのたこ焼き屋へ行く。おじさんも私たちの顔くらいは覚えているだろう。


先に聡がたこ焼き屋へ行き、そのあとで私が行った。


おじさんは、私たちがそれぞれたこ焼きをおみやげとして持ち帰ることに気づいたのだ。


教えてくれなかったのは、きっと、おじさんの優しさ。


「ナオと俺は考えることまで同じだね」


聡は楽しそうに言うと、沸かしてあったコーヒーをお揃いのカップに注いだ。


こいつらとも長い付き合いだな、と私は感傷的な気持ちになる。


それは、なんのへんてつもない、白く厚ぼったいカップなのだけれど、私たちにとっては、ちょっと特別なものだ。


真ん中に青いラインが入っているのが聡ので、ピンク色のラインが入っているのが私の。ここへ引っ越した時に初めて揃えて買った食器で、他のは割れたりかけたりしてなくなったのに、これだけは無傷で無事なのだ。


「食べよう、ナオ」


コーヒーから立ち上る湯気の向こうで聡が微笑む。


「うん」


たこ焼きの甘いソースが口の中に広がって、


「幸せぇ」


思わず、顔が綻ぶ。


そう。私は、嬉しいのだ。


聡と同じおみやげを買ってきたことが。


揃いのカップでコーヒーを飲むことが。


聡といる毎日が。


そして、きっと、聡も…。


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