ひつじを数えても

「眠れない。」


「なんで。」


「眠れないものは眠れない。」


「うーーーん、困ったな。パパの話じゃ眠らないだろ、おまえ。」


「でも今日は!ママがいないから!!パパが寝かしてくれないと困る!!!」


「『困る!』、ってなんだよ。パパはスーパーマンじゃないぞ。」


「じゃあ何。なんで、パパはいっつもいないの。なんで、ママは昼間に遊んでくれないの。なんで僕は、いっつもおじいちゃんとおばあちゃんと一緒にいるの。皆、ママがお家にいて、ケーキとかジュースとかくれるのに、なんで僕は、饅頭と抹茶なの。なんで、なんで、なんで、なんで、なんで。」


「はい、5回。」


「?」


「5回言ったね。『なんで』を。」


「うん。」


「5回分、『なんで』か考えたかい?」


「うー、うん。」


「はい、口だけ〜。」


「う〜〜〜っ!」


「よしよし。じゃあゆっくり、5回、パパと話しながら一緒に考えてみようか。『僕のおやつが饅頭と抹茶な理由』。」


「それは、おじいちゃんとおばあちゃんだからでしょ。」


「たしかにそうかもしれないけど、もしかしたらそうじゃないかもしれない。実はパパも小さい頃にそうだったんだ。まさか、お義父とうさんとお義母かあさんがそんな事をしてくれるなんて思わなくって。本当に『なんで』かな。おかしいなぁ。」

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