波を待つ

「おーい、置いて帰るよ。」


「うーん、もうちょっと見てたいんだけど。」


「そんなに波を見るのが楽しいか。泳げない癖に。」


「泳げないからこそ見てるんだよ。少しでも遠くに行くために。じっくり見ると、遠くに『行ける波』と、『行けない波』がすぐに分かるよ。」


「ふーん。分かるけどさ、『これだ!』って波に乗るのも楽しいじゃない。」


「でも、そんな波が『行けない波』だったら、ちょっと悲しくなるでしょ。君は、『よし!もう一度!!』って行くかもしれないけど、僕は『少し休憩したいな』って思ってしまう。だからこそ、波を見ているのだよ。良い波に出会えるために。良い波を待つ心を、持てる余裕を持つために。」


「全然違うね。」


「そうだね、全然違う。僕も、君も、全然違う。だから波も違うの。それでいいじゃない。」


「ぁ、高波。」


「...そうだね、そろそろ行こうか。後、五波も来たら、この街を飲み込んでしまうよ。」


「?!」


「まぁまぁ落ち着こうよ。それまで一緒にいてくれませんか。」

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