第2話夜明けの小島

風が吹く

笛の音 ゆるやかに

望郷をさそう 夕べ

そして君の輝く瞳と 笑顔


朝が来るまで こうしていよう

よりそっていよう

ともしびはトロトロと

ボクらを夢へ溶かしてゆく


望郷の夢は あこがれは

そりゃあ あるけれど

この空はどこまでだって つながっている

みんなこの星を 見てるだろう…。


たき火は明々として あたたかい

ボクらの夢が 燃えてるんだよね

さあ手を打とう さあ歌おう

ボクのこっけいは おもしろいだろう?


君の笑顔が ボクの喜び

子供らのはしゃぐ声が ボクの誇り

君らへの愛は 僕の名誉

だから いつまでも笑っていてね


君の踊りに ボクの笛

子供らみんなの 唱和の声

さあ盛り上がった さあ眠ろう

そう言ってるのに みんなボクにベッタリさ


ああ 眠い

そんな一日の始まりさ

夜が明けて 僕らは互いに笑ったけど

子供たちを 起こしちゃならないのさ


ほんとだよ

こんな日々が ずっと続くといい

そう願っているのに

果実ばかりじゃ 生きられない


そう、ボクは少しばかりの 殺生をする

天よ大地よ 草原のさざなみよ

許しておくれ

愛する人のため ボクは……。


くよくよなんて してられない

だから 食べなくちゃ

家族で 火を囲んで

一言も 口をきかないで


けれど 君

おいしかったね ごちそうさま

その一言が 救いになることを

知っているかい?


ああ 神様 ボクの手は黒ずんでいるのではありませんか?

ボクの口からは 腐臭がするのではないですか?

だけど 家族がよろこんでくれるのです

いくらでも 背負いましょう この罪を


だから今日も 生きていく

多少の殺生をしながら

楽しい夕べを おくるため

ボクは 祈り 生きるのです……。


いつか子供たちが 大きくなって

いくつかの 経験を教えねばならない

そして彼らは喧嘩のあとで

君に贈り物を 届けるようになるだろう

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