オリオンと海



あ、あ、濡れてる

なんだこれ?

体験したことなくて

生理ともちがくて

ずきずきするんだよね、ナカが

あ、濡れてる


あ、


あたしは海に抱かれている

浮かんでは沈み沈んでは浮かび

息ができなくなったり

酸素のほうからやってきたりして

ゆれながら

やっぱり濡れてる

あたしから漏れだした水は海水には混ざらずに

攪拌かくはんされたようにうごめいてる

あたしから流れる体液が糸を引き

夜深よぶかの海中で光り

道となる

海の奥の奥の奥の奥を指し示す

いけるかな

あそこまでいけるかな

きみとふたりならいける気もするけど

あたしは浮き沈みするだけの少女で

濡れてるってのに

でもそれだけだ


この静かすぎる夜に

あなたは別な海にいて

別な雫をこぼしているでしょう

海と海がつながるかどうかはわからないけど

見える星空は同じでしょう

オリオン


遥か空の果てから見るあたしたちは

きっとひとつのものに見える


つながりたくて

指を沈ませるよ

濡れてるよ




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る