間違いなく君だったよ



僕は君と命になりたいと考えている

揺れ動く光の残像の向こうで

君との日々を懐古する

いなくなってしまったものは戻らないけれど

僕は君と命になりたいと考えている

それは僕の生と君の死を重ねる行為であり

さようならのリズムであり

猫のまばたきである


回廊は止まらずに蠢いている

いつか叫んだ言葉が

誰でもない声で反響する

ごろうんごろうと

求めている

溶け合いたくて


―――――――――


 足りないよ

 愛をくれよ

 ずっと叫んでんだけど

 誰にも聞こえてないのかな


―――――――――


僕は僕を見失い

君のつもりで弦をはじく

まったく下手なコンチェルト

共に弾く相手がいないからソロ

欠けてしまった音階は

君であったか

空であったか

猫であったか

なくしてしまった諧調は

鳥であったか

疵であったか

 であったか

死んでしまった休符は

間違いなく君だったよ

間違いなく君だったよ


間違いなく君だったよ


―――――――――


 ただ一つ 触れあう手の境界

 僕らが失った温度

 埋めるように

 囁いて 囁いて 囁いて


 校舎の外 座り込んで見た星空に

 届かないと知ったなら

 何を歌えばいい?


 大気の熱が 通り過ぎていくよ

 まるでそこに何もなかったかのように

 夏は消えて


―――――――――


あいしていると言えなくもないけど

それはチャイにたらしたミルクよりも不確かで

結局届くものは

ぼくのつたない思いでしかなく

これはむりょくだろうか

それともごうまんだろうか


―――――――――


 LAKESIDE UNDER THE BLUE


―――――――――


思い出を振り返るためには言葉が要るが

明日を刻むためには何も要らない

とどのつまり僕らは生物でしかなく

呼吸の必要性には抗えず

けれど僕は君と

昨日も明日も手に入れたいよ


―――――――――


 必要で 必要で 必要で

 囁いて そこにいて

 必要で 必要で 必要で


 粉雪が   あの日の夏の鼓動を

 空から   ただ欲して

 舞って   届かないから

 触れ合う指先で

 そばにいて


―――――――――




―――――――――


 それは愛になる?

 それは愛になる?


 それはいずれ 愛になるの?


―――――――――


一匹の猫がやって来て

僕に愛の意味と

その矛盾と

無力さと

脆さと

死と

絶望を教える

あい

あいし

あいして

そんなこと

得る物もなく

けれど僕はでも


あ い  し て   る


―――――――――


僕は君と命になりたいよ

昨日も明日も手に入れたいよ


二匹目の猫がやって来て

僕に死の意味を教える




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