月の上で



夜に息をする

生きている証に目をこする

優しくなりたいと思う

なにがしかの灯りをともしたいと思う

孤独であることさえ過ぎ行く

きみの言葉になりたい

きみの拙さになりたい

完璧である意味なんてない

移りゆく幸せでもいい

こっちを向いてよ


優しさの

優しさが

優しささえ

優しさでも

優しさであれ

優しさだとて

優しさよりも

優しさなら

優しさから

優しさと

優しさは


夜に恋をする

生きていく証に目を閉じる

美しくなくたっていい

ささやかな灯りがともればいい

孤独であることさえ過ぎ行く

きみを言葉にしたい

きみで拙くなりたい

十全である必要はない

変わらぬ愛なんて求めないから

声を聞かせて


優しさの体温

優しさが通過して

優しささえ毒になって

優しさでも切なくて

優しさであれ罪になって

優しさだとて傷を作る

優しさよりも欲しいものはない

優しさならそれでいい

優しさから始めたい

優しさと温もりと

優しさはこの時の全て


手をつないで

兎の息を溶かして

息の根を止めて

生まれ変わらせて

夜に息をする

兎として籠もり

どこへも行けなくなるから

言葉を届けて

きみになった

僕になる

言葉が

電波に絡めて

届けて

救われなくても

続く息を

止めないで

止めて

生まれ変わらせて

やめないで

届けて

優しさで

過ちで

溶けて

消えて

消えないで

届けて

僕を言葉にして

生まれ変わらせて

息が止まらぬように

息の根を止めて

夜に息をする兎の呼吸を

止めてよ


きみに

あなたに

会いたいのは

会いたいのは

弱いからで

弱いからで

その弱さを歓迎する

ようこそ

月に飛び跳ねる


静けさの中で

全てが過ちに思える

孤独さえも過ぎ行く

もしよければ

移りゆく幸せの中で

きみの涙をまだ知らない

月の上で泣いてみせて

僕はきっと息もできない

それでいい



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