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瑠香は、ましろに指示された様に、端末に届いた履歴を全て削除し、端末自体も愛犬に預け、待ち合わせ場所へ訪れた。
ましろは、愛車の中で待っていた。
瑠香が運転席側の窓をノックした。
そうするまで、瑠香が近づいて来る事に、全く気が付かなかった。
瑠香は、ましろの様子に何処か違和感を抱いた。
何処が?と問われても『何となく』としか言い表せない程度なのだが・・・
「あぁ、瑠香さん。どうぞ?乗って。」
「有難うございます・・・失礼します。」
瑠香は、素直に助手席へ乗車する。
「缶だけど、温かいミルクティーあるの。どお?結構甘いやつだけど、平気?」
そう言って、缶のプルタブを開け、瑠香に手渡す。
車内にミルクティーの薫りが、甘く漂った。
「私も、甘いミルクティーの方が好きですよ。頂きます。」
瑠香は、渡された温かい缶を両手で包みこんだ。
缶や、紙カップの温かい飲み物は、好きだった。
手で、包みこんだ時の温かさが、心を緩ませてくれるから・・・
ましろは、その場からゆっくりと車を研究所へ向けた。
暫く走ると、ましろが口を開いた。
そして、瑠香の心臓が、どきりと跳ねる様な事を口走りだした。
「陽輔から連絡貰ったけど、瑠香さん、最近想いの
(えっ?!思い出したって?それに『そろそろ』って?な・・・何の事謂ってるの?怖い・・・ましろさんは、何か知ってるの?)
瑠香は、得体の知れない恐怖に包まれた。
自分に
「ましろさん・・・私の事で、何か知ってるんですか?」
「う~ん・・・その質問だとザックリし過ぎてるかなぁ?」
ましろは、明らかに、戸惑いと動揺を受けている瑠香を目の当たりにして、悪びれる風も無く、
楽しむと謂うか、ワクワクしている・・・まるで、新しい
純真無垢な子供の眼差しで、実に楽しげに問いかけてくる。
それが、余計に瑠香の恐怖心を
「瑠香さん。少し前に、友達の
数か月前に、笹本メディカル医院へ友達に付き添った事は覚えている。
しかし、友達の施術が終わった後、一緒に帰っては来なかった。
どうやら友達を待っている間に、気分が悪くなり、倒れてしまったらしいのだ。
瑠香の事は、病状が良くなり次第、責任を持ってましろが送り届け、友達には、先に帰宅して貰ったのだと、後から聞かされたのだった。
そして、倒れた時に一通り検査をすると、経過観察が必要だと診断され、笹本メディカル医院にも近い、陽輔の家にましろのツテで住む様になった。
体調が悪く、数日眠り続けたらしい。
そして、目覚めた時には、陽輔の住む洋館の部屋だった。
しかし、今にして思えば、全て、ましろや陽輔から、後から聞かされた事ばかりだ。
「瑠香さん、大丈夫?顔色悪いけど?そんなに怖がらなくても平気よ。ほら、温かいミルクティー飲んで、落ち着いて?」
瑠香は、動揺してしまい、いつもの注意深さが欠落していた。
だから、冷静だったら絶対に口にしない、少しでも信用のない相手から貰った物を、うっかり口にしてしまった。
陽輔を通して出逢ったましろへ、いつの間にか心を許してしまっていたのだろう。
動揺した瑠香へ、ましろは追い打ちを掛ける様に話を続けた。
後から思えば、それも思惑の一つだったのだろう。
そこに、まんまと付けこまれたのだ。
「瑠香さん、陽輔と幼い頃に既に出逢ってる事は思い出した?」
「!!!」
「じゃぁ、ご両親の事は?何処まで思い出したのかな?本当の事を。」
「ましろさん!?さっきから、何を言ってるの?何を知ってるの!?」
「あぁ~まだ、
「お、降ろして下さい!!」
「ダメよ。って言うより、降りられないでしょ?もう。そろそろ身体が自由にならなくなるはずだし。真実が知りたかったら、大人しく私と来た方が賢明よ?取り戻したいんでしょ?想いの
(えっ!?どうして・・・私に
瑠香は、あれこれ考えを巡らせたが、次々に疑問だけが沸き上がった。
不安が渦を巻き、みるみる大きくなり、息苦しくなるのを感じる。
気付くと、身体に力が入らなくなり、意識・思考も廻らなくなっている事に焦り、我に返った。
ましろの言う様に、急激な倦怠感と、眠気に襲われ出し、シートの上で身じろぐ事すら
手には全く力が入らず、逃げ出す事は不可能だった。
不用意に口にしてしまった飲み物に、薬が混入されていたのだろう。
瑠香は、
怒りで、目の前が赤くなる様な錯覚を感じた。
口元も、歯ぎしりが聞こえて来そうなくらいに、悔しそうに噛み締めている。
「そんなに恨めしそうに睨まないで。さっきのミルクティーに、睡眠誘導剤を入れたけど、それも、研究所に着く前に、想いの
ましろが最後の言葉を告げる前に、助手席のシートに力なく
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