遺跡の発見 ~ 都市国家ミドルアの誕生
帝政アグラレシアとナハトミカ連合国。
両大国の国境線がぶつかり合う海岸線上に、ミドルアと呼ばれる都市があった。
この都市が生まれるに至った経緯は今から三十年前。
リジェニエ暦四七二年のことである。
軍拡を推し進めるアグラレシアとナハトミカの軍勢がぶつかり合ったその地で起こった。
突如として起きた謎の爆発。
両陣営を巻き込んで起きた巨大な破壊の炎は、大地に奇妙な遺跡を浮かび上がらせていた。
第三者の関与も疑われ、互いに疑心暗鬼に陥る中、両陣営から幾人もの人員が注ぎ込まれ、遺跡の調査が始まった。
遺跡の周囲でいくつもの小競り合いが起きた。
しかし時間が経つに従って、少しずつ事実が明らかにされるようになった。
架空王朝の遺跡らしい。
伝説に謡われる、かつてありとあらゆる神話や伝承を封じ込めたという、封土王朝の五つの遺跡――そのうちの一つ。
そこから得られる利益は計り知れず、両陣営に加えてグリキア都市国家連合までもが遺跡の発掘に乗り出してきた。
だがある時、遺跡の奥から古の魔物が現れるに至って逆に、国家は遺跡を厳重に封じるよう動き出した。
遺跡は封鎖され、三カ国共同で監視されるようになった。
必然的にアグラレシアとナハトミカの国境も定まり、仮初めの和平も締結された。
アグラレシアとナハトミカの間で行われる小競り合いも、必然的に遺跡を避けて行われるようになった。
遺跡には四半期に一度、定期的な調査隊が送り込まれるだけになっていった。
遺跡の周りにできたのは、調査隊のキャンプ。
少しずつ物資が集まり、小さな集落と呼べる大きさになるまで、それほど時間は掛からなかった。
遺跡の噂を聞いた一攫千金を夢見る人々が集まり、危険を承知で遺跡に潜っていくようになった。
遺跡よりもたらされる様々な恩恵から、国境を接する三国は黙認した。
少しずつ集落は大きくなっていき――気づいた時には、そこに都市が完成していた。
――ここに一人の男が現れる。
イーハ・ブレヴィアリオ。
グリキア都市国家連合の商人であり、研究者でもあった。
彼は、その人脈を通して、様々な人材をミドルアに呼び寄せ、一気に開発に当たった。
そしてあるひとつの技術が完成する。
システム。
遺跡より湧き出る魔物たちから採取される不可視の粒子マナ(単位:EXP)。
それを人体に蓄積させることによって得られる様々なサポートギフト。
それは神代の人を呼び起こす技術。
世界に魔法の力が溢れていた頃の秘奥。
体内のマナが一定量に溜まったら、アェタイトクリスタルという結晶に変換することができるようになる。
そして、アェタイトクリスタルを使用して、人は特殊なスキル(ギフトと呼ばれる)を修練なしに手に入れることができる。
さらに、アェタイトが一定量溜まれば、クラスチェンジといい、人間の上位存在に進化することができるという。
それは、遺跡周辺でしか効力を持たない技術。
マナの濃度が一定以上なければ発揮できないシステム。
だが、この都市内では、神代の力が生きている。
その力を得ようと、リジェニエ暦四八三年、アグラレシアが軍を率いてミドルアに押し寄せてきた。
だが、イーハに率いられたミドルア軍は、圧倒的な力で自軍の数百倍もの軍を押し返した。
そうして、ミドルアは独立を宣言し――ここに奇妙な都市国家が誕生した。
時が流れてリジェニエ暦五〇一年。
今日も様々な夢を乗せて、この都市に人々が訪れる。
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