第三話 臨時王女
ミラナは
「着かたが、わからないでしょ?
キビキビとした
(はてさて、着ろと言ったり脱げと言ったり、
「あ……」
またミラナは幸村の裸に恥ずかしそうに
「さ、ここに腕を通して。覚えてね」
「ふむ」
ミラナの細い指がキビキビと動いて、幸村に服を着せてゆく。シャツのボタンをとめていくミラナの手から
「さ、
「ありがたい。
綿の白いシャツに黒のズボンに、
「
幸村は聞く。
「えぇ、どうぞ」
ミラナが言う。
幸村はベルトを
「お腹が空いてるんじゃない?何かお
「かたじけない」
はたして、どれくらい眠っていたのだろうか。
「ついてきて」
ミラナは、幸村を
「マーサ!急で悪いけど、お客さまに何か食事を用意してあげて!」
ミラナは少し大きめな
「お目覚めになったのですか?わかりました!少しお待ちください!」
遠くから若い女の声が少し
「入って」
通された部屋は
「座って」
ミラナは幸村に入り口右手側の椅子を勧めると、幸村の向かい側の椅子に
「ねぇ、あなたはどこから来たの?
ミラナは
幸村にこの地が謎であるのと同じく、ミラナにも幸村は謎の
「これは
幸村は
「ふーん、さえもんのすけ……長い名前ね。幸村って呼ぶわ。いい?」
「えぇ、どうぞ」
「幸村はナイトなの?」
「ナイト?」
「えっと……
「なるほど。サムライ、
「ふーん。
ミラナは笑みを浮かべて言うと、幸村の横に立てかけられた刀に
「幸村の
「えぇ」
幸村はテーブルに立てかけた
「見たことのない造りの剣ね。ウェダリアの剣とは違う……」
「抜いてみても良いかしら?」
「どうぞ」
幸村は手を伸ばして、村正の
ミラナはその細い腕で、
「……
この作特有の乱れ刃が、彼女の
「ありがとう。美しい剣ね」
ミラナは幸村に村正を返した。
そこにメイド服を着た若い女が、
「ちょうど
部屋にはなにやら、うまそうな匂いが満ちてきた。
「マーサ、ありがとう」
ミラナが言った。
さっきの若い女の声はマーサと呼ばれた、彼女の声のようだ。
「姫さまのお
マーサは一旦食卓の準備をする手を停めると、幸村にお辞儀した。
「ご丁寧に、いたみいります」
幸村も礼を返す。
「お酒はお飲みになられます?」
マーサは料理を並べつつ聞いた。
「いただこう」
空腹なだけではない。言われてみれば、ひどく喉も乾いている。
「それではエール酒をお持ちしますね」
マーサは
「どうぞ、飲んで」
ミラナが勧める。
「かたじけない、いただこう」
言ったは良いが、幸村には見たことのない飲み物だ。
(ん!これはイケる!)
思うと、そのまま
「くぅ!うまい!しかし初めての味ですな」
「シナジノアでは
ミラナは言った。
マーサは、ドーム状でピカピカと輝く皿カバーに覆われた皿を、テーブルにところ狭しと並べらた。
「さぁ!当ウェダリア城の料理長が、
マーサは言うと、皿カバーを
羽が6つある鳥の姿焼き。
幸村には見慣れぬものばかりであるが、たまらなく美味そうな香りを
「どうぞ、召し上がって」
「有り難きこと」
幸村は空腹のあまり、すぐに手が出そうになるところを
心を
「いただきます」
と静かに言った。
その数秒後───
カッと目を開き怒涛の勢いで食べだした。
そのあまりの勢いに、ミラナとマーサは
「アハハ、そんなに急がなくても、ご飯は
ミラナは笑って言った。
「なに、
幸村は、あっというまに食べてしまっていて皿にはキレイになにも無い。
「はい!ただいまお持ちします!」
マーサはあわてて
「いやはや、落ち着いた。かたじけない。
テーブルの上の
「それは良かったわ。
ミラナは静かに微笑んだ。幸村は聞く。
「何とお呼びすれば良いかな。ミラナどの。で、よろしいか?」
「えぇ、それでいいわ。幸村」
そこにマーサがやってきた。白い
「ミラナどの、これは?」
「
ミラナは
「ふむ……」
幸村には、珈琲が何かよくわからないが飲んでみるしかなかろう。口をつけてみる。
「む……苦いな……だがこれはこれで美味くもある」
「そうね。子供の頃は飲めなかったけど、この頃はとても美味しいわ」
ミラナが言った。
(しかし、この
幸村は思うと聞く。
「ミラナどのは、お若いがこのウェダリア国を治める
「そうよ。この前までは姫だったし今でも姫ってよく呼ばれるけどね。今は
ミラナが微笑み言った。
「
「そうね」
「父上はどちらに行かれたのです?」
「父は今、
「そうですか。危険なところなのですか?」
「うん……そうね……」
ミラナの
「ところで、泊めて頂いて
ミラナは少し考える。
「幸村は、武人なのよね……いくさをしていたとか」
「えぇ、いかにも」
幸村はうなずいた。
「なら聞かせて。幸村は強いの?」
ミラナは
「どうですかな……。
「そう……」
ミラナは幸村の目をまっすぐ見ると静かに、だが力強く言った。
「我がウェダリアは、永く
「えぇ……分かり申した」
幸村は、想像以上の重い
この国に、何か
沈黙に耐えられなくなったのか、ミラナが笑みを浮かべて言う。
「さて、お腹もいっぱいになったし、
「ふむ……では、そうさせていただこう」
幸村は
刀を置くとベットに寝転ぶ。
「さて、妙なことになったな」
幸村は
(ともに戦っていた
自分は三途の川を渡りそこねたのか、妙な所に来てしまった。
「わからんことは考えても仕方あるまい。今は休もう」
幸村は眠りについた。
そして、
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