第二話 日ノ本ではない世界
(……ここは……
(おかしい。死んだのか?)
幸村の
(はて、
気を失っているところを、大阪城に運び込まれたのであろうか。あの
(
身体に目をやる。腕、体に受けたはずの
(あのいくさが夢だったのか?いや、そんなはずは無い。いったいオレは何処にいるんだ?)
部屋の入り口、ドアの脇に、幸村の着ていた
(やはり夢ではなかったか……)
ベットから
鏡があることに気がついた。鏡に映る
(若返っている!?何故!?いったい何が起きているのだ?)
幸村は、まったくもって
その時、ドアがガチャリと開き女の
「あら?
幸村、声のしたほうに目を向ける。
そこには女がひとり立っていた。女というにはまだ歳が若い。娘というべきか。十代後半だろうか。背が高くスラリとした
(はて、美しい娘よ。オレより少し背が高いな。
幸村は南蛮人を
「あの!……気付いたのは
娘は伏し目がちに幸村を見る。
「ん?
幸村は驚いた。
「あの!もう
幸村の聞いてなさに、娘は少し怒っているようだ。
「ん?あぁ、そうか……」
言われてみれば幸村は、
「ふむ、すまんな」
幸村は謝っているものの、悪びれる
「だっ!だから!ふ……服を!」
「
娘の右手側にある
娘の目の前をすりぬけると、
娘はその様子を、頬を
「そなた、名はなんと
幸村は、あらかた服を身につけると尋ねた。
「わたしはミラナ・ドゥ・ウェダリア。この城の主よ」
ミラナは
(気付かなかったが……若き日の淀の方に似ている……)
幸村は驚いた。髪、瞳、肌の色こそ違え、若い頃から
(淀の方も美しきおなごであったが、すでに
幸村は、大阪城を思った。ミラナが言う。
「どうかした?まだ寝たりないの?」
押し黙った幸村に
「いや、
幸村は、着物の
「一つ一つお
ミラナは言うと椅子に腰掛けた。黄金色の髪がサラサラとゆれる。幸村が服を着て、どうやら
幸村は寝ていたベットに腰掛けた。ミラナは幸村に
「まずここは、ウェダリア国のウェダリア城。ウェダリア国はシナジノア島に5つある国の一つなの。小さな国だけど古くから伝わる
「ふむ、なるほど」
幸村は静かに、うなずいた。ウェダリア国と大阪城の
「あなたは、川の近くの葡萄畑に倒れていたという話よ。あなたの身につけていた
「転生?」
「そう。シナジノア島ではごくたまに、あなたのような見たこともない異国の服を来た人が、どこからともなく現れることがあるの。みんな同じようなことを言うわ。『死んだはずなのにここは何処か?』『なぜ若返ったのか?』『傷が治っている』って」
「ふむ……」
「そんな転生してきた人たちを、私たちは『
ミラナはニコリと笑って
「転生者がウェダリアに現れたのは三十数年ぶりだって、さっき街の古老が言ってたわ」
「そうですか。どうやら助けていただいたようだ。恩に着る。世話になりっぱなしで申し訳ないが、新しい着物をくれんか?このとおりだ」
幸村は着物の腹のあたりを引っ張ると、
「いくさで着ていたものでな。どうにもこの服はもう
「あら、あなたの来ているような服はないけど、何か
ミラナは部屋を出て行った。
部屋には、また
幸村は、静かに窓の外を見つめた。よく晴れている。さきほど死を
幸村は懐に
(三途の川で渡し損ねてしまったようだな……渡る
幸村は思った。
そこに、またミラナの軽やかな足音が近づいて来た───
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます