第3話


 誰も寄り付かない寂れた市街地にて。

 ヴァリア、十体。

 いずれも小型だが形状は様々。人型の蜥蜴、鋭く長い爪を持った鳥人、羽を生やした悪魔のような異形、一対の頭と二対の腕を持つ鬼などなど。

 全て黑子だ。

 本来この数だと四、五人でやるものなのだが、今私は一人。

 魔法少女は、当然な事ながら人手が全く足りていない。なれるのは子供限定で、しかも一握り。どーしようもないのだが、私達としてはどーにかして欲しい。

 しかし、現状を嘆いたって仕方がないので、金がたくさん稼げるからいいや、と納得しておく。じゃないとやってらんない。


 現在ヴァリア十体が此方に向かって進行中なわけだが、これが不利かどうか聞かれれば私は問題ない。他は知らないが。


刀剣ブレーダー。十分後にまた来るから。終わらせといてね」

「十分て…普通だったら終んねぇぞ」

「貴女、普通じゃないでしょ」

「…………」


 そう言って消える転移者ポーター

 面と向かって普通じゃないと言われると傷つくのだが。


「…まあいいや」


 奴らも来たことだし、始めますか。

 取り出すのは双剣。大剣と同じ漆黒の刃。それを構え、敵を見据える。


「「「「「ゴアアアアアァァァァァァアアアアアッッッッッッ!!!!!!!」」」」」


 奴らが私に気付き、咆哮を上げる。


 と同時に私は走り出す。


 ドゴンッ!! という、人が走る音とは到底思えない轟音を後方へ置き去りにし、奴らに肉薄する。

 今回は、飛べる奴が二体に、硬い奴が一、遠距離攻撃ができる奴が二、力が強そうなのが二、その他が三だ。

 一体一体相手している暇はない。タイムリミットは十分だし、相手も待ってはくれないだろうし。


 なので、まずは目の前の鳥頭から。強めの初撃で腹を斬り、鳥頭を怯ませ、そこから返す刀でもう一撃。剣速を上げ、さらに斬っていく。が、それを周りが見ている筈もなく、途中で蜥蜴が殴りかかってくる。

 それを鳥頭の股を抜けて回避、標的を悪魔に変更し、また斬りかかる。


「ふっ……!」


 それを幾度となく行い、最後に硬い奴を斬りにいく。もちろん、双剣で切れる筈がないので大剣に換装。

 斬っていく。

 他の奴らの邪魔も入るが当たらない。当たらせない。当たったら死ぬ。

 そうして最後も斬り終え、その場を離れて魔法を発動させる。


【広域焼円陣・龍顎焔牙】


 丁度、十体を覆うように炎が吹き上がり、勢いを増し、紅く染め上げていく。

 そして炎は、徐々にその容貌を変え、ついに龍へと成る。燃え盛る紅き炎龍はヴァリアを呑み込み、問答無用に一切合切を焼き尽くしていく。

 炎が収まった後にはヴァリアの姿は無く、いたであろう場所にはキューブが落ちているだけだった。


「あぁ……疲れた…」


 敵の脅威もなくなり、転移者ポーターが来るまで休もうと腰を下ろす。が、天は、神はそれを許してくれないらしい。


「あら、丁度良かったらしいわね。キューブ回収して次行くわよ」

転移者ポーターァァッッ…来んのはえぇよ! 今くらい休ませろっ! 過労死するぞっ!」

「はいはい。口じゃなくて体を動かしなさい。私だって暇じゃないんだから」


 知っているっ、知っているけどもっ、疲れるんだよ、精神的にっ。


「次行くわよ次」

「少ないよな…?」

「そう何回も十体とか出て来られたら困るわよ、主に貴女が」

「だよなよかっ……」

「七体よ」

「………………よかねぇぇぇええええええっっっ!!!!!」

「うるさい。…まあ、頑張ってね社畜ブレーダー


 これは…アレだな。


「ブラック過ぎるぜ……魔法少女」




 もうやだお家帰りたい。




 まあ、そんなこと出来る筈もなく、私は今日も戦いへと身を投じていくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る