14.地球・ジ・エンドⅢ

 翌日――


 登校して自分の教室に向かう途中、俺は、に呼び止められた。


「よう百瀬! 昨日ぶりだな!」


 朝からご機嫌だな、うっとおしい。

 ああ、昨日俺がヤンキーの才川か。

 まだ効果続いてんのか。

 単細胞め。


「そうですよね」


 俺は、と頷く。


「お前が昨日さ、センスいいなってゆってくれたブレスよぉ、露店にまだ売ってたから買ってきてやったぜ!」

「は? 俺にくれんの?」


 なにこいつ。

 単純な奴。

 俺にお揃い付けろってゆーのか?

 確かにお前には似合ってると思ったけど、俺はヤンキーじゃねえぜ。

 いや、まあ見た目はヤンキーぽいとかも言われるけど。

 しかし、単純すぎだろ。

 これだからヤンキーは単細胞とか言われるんだよ。

 まあ、素直に喜んでるところを見るのは悪い気しねーけど。

 良く言えば純粋な奴なのかとも思えたりするが。

 ちょっと箕面と被るじゃねーか。


「あんた、箕面みたいな奴だな」


 俺はいちおうとして言ってみた。


「まじ!? そいつぁ、うれしいぜ! 箕面いいよなあ。可愛いし、健気だし、本気で叱ってくれるし、ドジなところも放っておけない感じでよお。俺とは住む世界が違うってゆーか」


 かわいい?

 ああ、箕面は女だったか。


「そうですよね」


 俺はこくこくと頷く。

 箕面は美少年ではないが美少女と言われているらしい。

 俺にとって女としての外見的魅力は皆無だが、声は好きだ。

 三千ヘルツぐらいの音域で、大人しい少女役でもちゃんと通る声。

 トゥットゥルー。


「お前、わかるのか! だよなー、俺のことプッシュしといてくれよ! お前、仲いいんだろ!?」


 俺はこくこくと頷く。

 しかし、こいつよく喋るな。

 こんな奴だったっけ。

 会話が続かないのが俺の特技だったのだが。 

 二つ目の龍玉のせいなのか?

 勝手に新密度あげられても、俺のほうが付いていけそうにないんだが。


 そうですよね、こくこく、か。

 確か『そうだよな』でも良いって言ってた。


 そうして俺はまた、であろうが、であろうが、であろうが、であろうが、相槌あいづちを打ちまくった。


「百瀬、今日は真面目に授業聞いてるじゃねーか。先生嬉しいぞ」

「そうですよね」

「おお! お前もついに自分を見つめ直してくれたのか! 偉いぞ!」


 いや、ほとんど聞いてなかったんだが。

 今の、会話としてどうかと思うが、どうやら『そうですよね』は、相手が勝手に良いように解釈してくれる魔法の言葉のようだ。

 大人に通用するのは楽でいいな、さすがドラゴムボール。

 ついでに鳥とも解り合えた。

 気がする。



 放課後――


「ゆーま、今日はうち寄ってく?」

「そうだよな」

「寄ってく!? やったー! 見せたかったアニメがあるんだよ! これが泣けるんだよー」

「やや、今日はほれ木曜日、に付き合う約束の日だからよ。行けねーわ」

「あ、そうだったね。……残念! 頑張ってるんだよね、ちゃん」

「そうだな。わりいな箕面、また今度」


 そういって、箕面と別れた俺は帰宅する。


「ただまー」


 玄関を開けると俺の胸に飛び込んでくるペット。

 ではなく、

 俺の妹だ。


「兄ぃ、最近遅い。しんぱい」


 チビで甘えたで軽く厨二病だが、これでももう中学三年だ。

 抱きつきながら俺を見る上目使いは破壊級だが、妹ルートは無い。

 完全なる血縁だからな。

 可愛いが、そうゆう趣味は無い。


 とはいえ、こいつのブラコンにも困ったものだ。

 内気な性格でアニメ好き、俺に似たせいか、友達もいない。


 そんな妹だが、夢を持っている。

 俺はその夢を週二、三で手伝いしているのだ。

 もともとは俺が興味本位で買ったギターを、飽きて妹にやったのが始まりだ。

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