04.社長への裏口入学Ⅱ
さて、帰るか――
箕面も来たことだし。
階段でグネったおかげで、保健室で可愛い上原に手当てをしてもらった。
ありがとうヤンキーくん。
ラッキーイベントに感謝しつつ、箕面にカバンを持たせ靴箱へ向かう。
しかし不便だぜ。
もうギブしそう。
「ひどい目にあったねー」
ひどい目か。
真っ白も見られたし、上原と話も出来たし、俺はラッキーとか思ってたりもするが、今は言うまい。
「ところでゆーま、面談はどうだった?」
箕面が聞いてきた。
面談か。
「やっぱ後藤に馬鹿にされたわ」
そうだ、鼻で笑われた。
「そっかー。くやしいね」
言われてみれば確かに。
悔しい気持ちになってた気がする。
鼻で笑いやがって。
ぶひぶひ。
口で笑えよ豚野郎。
てっきり真面目な
良い奴め。
「ま、俺も後藤の感情を
「そうなんだ」
「なんか、こう気持ちって伝えにくいよなぁ。言われてることはわかるんだけどよ」
「そうなんだよね。難しいよほんと」
箕面はコクコクと頷く。
「俺だって色々考えてんだけどな。 答えが出ないから悩んでんだけどなあ」
「そうだよね。何か良い方法ないのかな」
理解者はお前だけだよ。
真剣に聞いてくれて、叱るでもなく。
救われるぜ。
ありがたい。
そんなことを考えながら靴を履き替えていたら、つい怪我の事を忘れて右足首に体重を乗せてしまった。
「いてっ!」
俺は体勢を崩すも、箕面に支えられなんとか持ち
「やっぱ病院行ったほうがいいんじゃない?」
箕面は心配そうな顔で俺に言った。
「そういえば……」
俺は上原にもらったカードを、ブレザーの内ポケットから取り出した。
「なにそれ?」
と、箕面が覗き込むので、渡してやる。
「上原がここに行けってよ」
さっき保健室で貰ったことを話した。
「なるほどー、帰り道だから行ってみたら?」
「箕面くんは付いてきてくださらないのですか!?」
「んー、今日はお婆ちゃんに晩御飯作ってあげる約束してたから、早く帰らなきゃなんだ」
まあ、それは俺も知ってた。
俺の怪我のせいでもう五時、陽が傾いてきているし。
「だよな、悪かった」
「ごめんねゆーま。入り口までは付いていくから安心して。それに――」
どうやら、行ったらわかるから大丈夫だと箕面は言う。
一人で行くのコワイヨー。
しかし、俺のためにと、どんなところかを一生懸命説明してくれる箕面に感化され、最終的には行く決心をしたのだった――
§
校門を出ると、ゆるやかな坂が続く。
枝を伸ばした桜並木が豪勢な春色を演出している。
4月の少し肌寒い空気に肩をすくめ。
振り向くとそこは――
俺達が通う光月高等学校。
うちは総合選抜なので、学校間格差の解消を目的として、合格者を学区内の各校に平均的に振り分ける制度のため、ヤンキーくんからメガネちゃんまで色んな奴がいる。
坂をおりると広場があり、駅や商店街へと続く道へと別れている。
俺達は商店街を抜けた先の住宅街に住んでいるのだ。
箕面は怪我した俺のペースに合わせて、ゆっくりと目的地まで付き添ってくれた。
昨日のアニメはどうだったとか、あのバンドの新曲がどうだとか、たわいもないいつもの会話とともに。
「ここか……」
見上げると看板には――
帰り道なのでよく前は通る。
うちの運動部の奴らが出入りしているのも何度か目撃している。
「じゃ、僕は行くね!」
怪我した俺に付き合ってくれた箕面は、時計を見て焦って別れを告げる。
「おう、ありがとな!」
さて、どうしたものか。
病院きらい。
キンチョーしてうまく言えないし。
ま、なるようになれ。
俺は入り口の自動ドアのボタンを押す。
中に入ると、受付カウンターにいるナース服の天使さんが、こんにちわと微笑んでくれる。
綺麗な人だなー。
もろ俺好みです。
茶色がかった長髪に、色素の薄い白い肌、麗しいぱっちり瞳に長いまつげ……
「って、上原じゃん!!」
へ?
なんで?
上原コスプレ?
ナース服着てると大人っぽくてわからなかった。
思わずグーサインを出しそうになったが、秘めたる恋心で抑える。
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