第7話 妹

1ヶ月後。


なんか、最近ママのお腹が膨らんで来たように感じた。


なので思いきってきいてみることにした。


「ママ、そのおなかどうしたの?」


「これはね、シンがお兄ちゃんになる準備なのよ」


「おにいちゃん?」


「それはね……お兄ちゃんなのよ。お兄ちゃんはお兄ちゃんなのよ」


「よくわからないよ」


「今はまだわからなくてもいいのよ」


そんな感じにはぐらかさせてしまった。まあ、毎晩艶めかしい声を聞かせられれば、ある程度は分かるよね。


僕には、弟か妹ができるらしい。


まあ、妹か弟も異世界人ってことはないよね。まあ、僕は今までと同じことを

するだけだけど。



そして日々大きくなって行くお腹を見ながら、8ヶ月が経った。


僕は兄になり、妹ができました。


最初は、全然会わせてくれなかったが、パパからはどんな様子かは聞いていた。


でもそれは聞きたくなかったな。


「アイリは俺たちと同じ日本人なんだ!」


あ、アイリは僕の妹の名前だ。


ほんとそれだけは聞きたくなかった。はあ、今以上に気をつけないとな。妹とは1番一緒にいることになる可能性が高いからな。


会ったとき、やはり美男美女の娘だと思ったよ。すごく可愛らしい。しかし、妹は僕の容姿の方が驚いていたようだった。その証拠に。


「お母さん、本当にこの人私のお兄ちゃん?」


「ええ、そうよ。それにアルビノっていいと思わない?中二心をくすぐられるというか」


「まあ、そうかもしれないけど」


あ、あぶねー。ツッコミそうになったじゃねえか!ポーカーフェイスを保つのがやっとだったよ。というかママってそんなこと思ってたんだ。


「それにどことなくあなたと似てるじゃない」


「まあ、確かにお母さんたちには似てるね」


な、何ぃぃぃ?!ということはもしかして、僕ってイケメン?いよっしゃぁぁぁ!これで僕は勝ち組だ!


いや、ほんとポーカーフェイスを保つのさえ難しくなってきた。


ので、こちらから話すことにした。


「ママ、ママ、ぼくにもだっこさせて!」


「うーん、危ないんじゃないかな?」


「私なら平気よ。たかが子供の高さから落ちても大したことないから」


「そう言うんじゃないけど。そういうならいいか。シン、無理はだめだからね」


「うん、わかってるよ」


それで抱くことである程度落ち着くことができた。あのまま続いていたら、どうなっていたこ──。


「あなた、本当に日本人じゃないのね?」


落ち着くことなんてなかった。こ、こ、こ、これ、ど、どうすれば、いい?

とりあえずは落ち着こう、落ち着いて何か言わねば。


「ママ、アイリが何か言ったよ?」


我ながらナイスだ。


ママはすぐに来て妹を抱き上げた。それから、日本語で話し始めた。


「アイリ、どうしたの?」


「お兄ちゃんって本当に異世界人じゃないの?」


だ、だからそういう爆弾発言はよそうか。ポーカーフェイスを保つのも大変なんだから。


「そうなのよねー、私も異世界人だとは思うんだけど、隠す意味がないし」


「確かに。そこだけが不思議なんだよね」


へ?どゆこと?


「あれ?気になっているのって、そこだけなの?」


「うん。他は普通の赤ちゃんと大して変わらないし。それに、そのことに関しては来る途中で女神とかから聞くはずだし」


ちょっと、待ていぃぃぃ!僕何にも聞いてないんですけど!?


「それでどんなこと言われたの?」


「うーんとね、向こうの世界では異世界人は保護の対象になっているってこと」


あんのジジイぃぃぃ!そんなこと一切言ってなかったじゃねえか!そのせいで今こんな大変なことになってるじゃねえか!?


まあ、僕がプライドを捨てればいいだけの話なんだけど。だから自分から言う気になれないんだよな。


「確かにね。そんな法を作ったやつもいたわ」


「だから、隠すメリットはないのになんで隠すのかが不思議なんだよね」


はい、そんなこと知らなかったやつです。まあ、そんなこと考えもしないんだろうけど。


「そうなんだ。でもそれだけなの?」


「ううん、ここまで日本人で固められると、なんか隠謀を感じるんだよね」


「でも、シンは多分間違いなく異世界人じゃないよ」


「え?そうなの?」


いいえ、違いますよ?


「ええ、だってステータス見たけど、変わってるのが1つあるだけで他は普通だったし」


「隠してる、とかは考えなかったの?」


「さすがに、レベルMAXの鑑定を偽るのは無理だと思うから」


「それで変なのって何?」


「ああ、無属性適性ってやつよ」


「え?」


「え?」


え?


「なんでそんなの持ってるのよ!」


え?え?え?どうこと?


「それがどうかしたの?」


「どうもこうもないわよ!それってかなりレアなスキルなのよ!私なんかそれ取れなかったんだから」


え、マジ。これって、そんなに貴重なん?


「きゅ、急にどうしたのよ?」


「いや、それは無理なのか?ってことは最初からの素質?やっぱりチートじゃない!?」


「自己完結しないで説明してよ」


ママが憐れだ。娘に言い負かされてる。やっぱり、少し子供らしくして普通の子育てってものを体験させないとな。


そう変な決意をするのだった。


「あ、ごめんなさい。簡単に言うと無属性適性ってスキルは取ることができる人は今までに1人しかいないのよ」


「なるほど。つまりシンが異世界人ってことね」


「ううん、それはありえないの」


「え?なんで?」


「その人は7年くらい前に来てるはずだから、2歳のお兄ちゃんは違うと思う」


「え、じゃあ……どういうこと?」


「つまり、異世界人でもないのにかなりのチートスキルを持っているってこと」


え、まじ?このスキルってチートだったんだ。ってことはこの体どんだけチートなんだよ。まあ、異世界人なんですけどね。


「さすが、私たちの息子ね♪」


「なんでお兄ちゃんがこんなにチートなの?理不尽だ。まあ、私も人のことは言えないけど」


「よーし、シンを鍛えるぞ!」


お、お手柔らかにお願いしますね。


でもこのせいで少しだけ疑いが掛けられてしまった。まあ、バレてしまっても仕方ないとは思っている。僕が社会的に死ぬだけだし。


「私も鍛えてね」


「わかってるよわよ」

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