第75話 猫被り王女
「ああ、もう!わかったわよ!いつものしゃべり方に戻せば良いんでしょ!」
シャロアはもう無理だと判断し、そう声を荒げながら言った。
シンはその様子を見てもあまり驚きはしなかった。最初の一言からなんとなく、猫を被っていたことはわかった。
でも、リリーナはその変貌ぶりに驚いていた。
「え、えーと」
ただ、その変貌ぶりにどう対応して良いかわからず、シンは口ごもってしまった。
「ああ、私に敬語とか気にしなくて良いから。むしろしないで」
「え、あ、はい」
シンはシャロアの一方的な話し方に肯定することしかできなかった。
「それと!このことは広めないでね。私の印象が崩れるから」
「わ、わかりました」
シンはシャロアの話し方が怖く、逆らえないと感じた。
リリーナはシャロアの話し方が変わってからずっと黙ってただ首を縦に振り肯定しているだけだった。
「そんな、釘をさしたところで今更遅いでしょ」
と、横からアイリが水をさしてきた。
「そんなことはないわよ。少なくともこのクラス以外では私はお淑やかで優しく、聡明な王女って認識されてるから」
シャロアは胸を張りながらそう答えた。
シンも今日会うまではシャロアの言った通りの印象を持っていた。ただ、それも今日会ってみてお淑やかという部分だけは確実に肯定できなくなった。まだ全然話してなかったので他のことは否定できなかった。
その後は、授業開始まで話していた。まあ、シャロアがお淑やかでないとはいえ、王女という印象が強く、近づき辛かった。
シャロアはそんなシンたちの心情御構い無しにシンやリリーナに近づいていた。ただそのおかげで、今日一日でシンとリリーナはシャロアに王女というお堅い印象は無くなっていた。
今日一日シャロアを見て意外だったのは、シャロアがかなり面倒見が良かったことだ。シンとリリーナはAクラスからの進級だったこともあり、Sクラスの人から何かとサポートをしてもらっていた。
まあ、シンは転生者のためSクラスの内容にも問題なくついていけたため、サポートされなくなっていた。でもリリーナは転生者ではないため、Sクラスの内容には少しずつ遅れ始めていた。そのため周りでかなりいろんなことをサポートしていた。
その中でも、今日会ったばかりのシャロアがリリーナに付きっ切りで色々と教えていた。最初はリリーナも萎縮してうまく話せていなかったが、少しずつ慣れていき、今日一日でかなり仲良くなっていた。
シンは勝手に王女など、地位の高い人は腹黒が多いと思っていたが、シャロアはそんな人ではないことがわかり、考えを少し改めた。まあお淑やかさはないんだけど。
仲良くはなれたが、翌日からシャロアはまた忙しくなったのか、学校には来なかった。そのことでリリーナが少し落ち込んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます