第74話 王女
いつものように学校に行くと、1人見慣れない女の子がいた。その女の子は周りのSクラスの転生者と雰囲気が違っていた。気品があるというか、住む世界が違っているような感じがした。
シンはその女の子と今日初めて会ったはずだが、どこか見覚えがあった。
シンが初めて会う女の子にどう声をかけるか悩み、その場で考えていると横からアイリが声をかけた。
「シャロア、久しぶりね。今日は来ても平気なの?」
「ん?アイリ、久しぶり——」
そのシャロアと呼ばれた女の子の声にシンは違和感を覚えた。それは、見た目と声質があってなかったからだ。見た目は優雅で近寄りがたい印象だったが、声質は気の抜けた一般人のような感じだった。
シャロアは見慣れないシンとリリーナの姿を確認すると、急に話すのをやめた。その後、シャロアは後ろに振り向き、何かブツブツと呟いていた。
しばらくブツブツと何かを呟いた後、シャロアが振り返った。
「アイリ、久しぶりですね。今日は、ようやくひと段落したので、来ることができました」
シンとリリーナはシャロアの変わりように驚いた。さっきの気の抜けた声とは違い、落ち着いた声になっていた。心なしか表情も引き締まったように見えた。
シンにとってはこの声の方が初対面のイメージとあっていた。ただ、さっきの気の抜けた声を聞いてしまっているので、違いに戸惑っていた。
「シャロア、今更変える必要はないでしょう?」
アイリは、シャロアのその変化を見て呆れているようだった。
「な、なんのことでしょうか?」
シャロアは声のトーンが少し上がっていた。
「はあ。これに時間をとってもしょうがないから、今は何も言わないよ。お兄様、リリーナ、こちらの転生者はこの国の王の娘のシャロア・オルレインです」
「へえ、そうなん——王の娘?!」
シンはそれを聞いてようやく思い出した。そりゃあ、見覚えもあるはずだ。リリーナも王の娘っていうことで、思い出すと同時に萎縮してしまっていた。
「そう。まあ普段はやることが多くて学校には来られないのだけど、たまにこうして来てるんだけどね」
アイリがそう続けていたが、シンとリリーナにはほとんど内容が頭に入って来ていなかった。
でもシンはリリーナより早く冷静になることができた。そこで、名前を言ってないことに気づき、名前をいうことにした。
「えっと、僕はシン・サトウです。それとリリーナです」
「え?あ、リリーナです」
リリーナもシンの言葉でようやく状況を理解し、慌てて名前を言った。
「シン君にリリーナちゃんですね。よろしくお願いします」
「よろしく、お願いします」
リリーナはすぐにそう返した。しかし、緊張してか、声が震えていた。
「あ、はい、こちらこそよろしくお願いします。えっと、シャロア、様?」
シンもリリーナにつられるようにそう言った。ただ、どう呼べば良いかわからず、語尾が上がってしまった。
「シン君もリリーナちゃんもそんな緊張しなくて良いですよ。それと様付けはやめてください。私たちは同じクラスメイトなのですから、敬語も不要ですよ」
「「はい」」
シンとリリーナはそう答えるのが精一杯であった。
「シャロア、いつまでそのしゃべり方続けるの?」
「へ?な、何のことですか?」
「今更無駄でしょ?さっきの時点でバレてるでしょ。それにそのしゃべり方キモいからやめて」
アイリは、シャロアに酷いことを言っていた。
「キモいってどういうこと——?!んん!——アイリ、そんな言葉は適切じゃありませんよ」
シャロアはキモいということに声を荒げたが、シンとリリーナのことを思い出し、咳払いをした後、キレイな声に戻した。
「だから、シャロアもう無駄だからやめて、ね?」
そういうとシャロアがこちらに視線を向けてきた。でもシンもリリーナもなんて答えてよいかわからず、顔を逸らしてしまった。
シンはシャロアが普段は猫を被っていることがわかった。でも、このSクラスではどうやら猫を被ってはいなかったらしく、シンとリリーナにそれがバレてしまった。
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