第69話 ルティーナの好きな人
「えーと、それのどこに問題があるの?」
僕はルキにそう聞き返していた。
「どこって、1番の根拠だと思うんだけど?!むしろ今までのことなんておまけだよ?!」
「いや、こっちの方がおまけだろ」
「違うから!こっちが本命だから!」
「じゃあ、なんでそうなるんだよ」
僕は、ルキがなんでここまで声を荒げているのかわからなかった。だから、理由を聞けば納得するかもしれないと思い、そう聞いた。
「なんでって、私はルティーナの幼馴染みなんだよ?」
「そうだな」
ルキがそう確認を取るように聞いてきたので、相槌を打った。
「だから小さい頃からシンくんのことは聞いていたんだよ?」
「え?本当?」
転生後の僕も知っているかのような口ぶりで少し驚いた。
「聞いていたのは、前世に好きな人がいたとか、どんな人物だとかくらいで、名前までは聞いてなかったんだけどね」
それを聞いて少し安心した。
「あ、そうなんだ」
「まあ、ルティーナのシンくん絡みの話はほとんど聞き流していたんだけどね」
「おい!それで良く関連があるなんて言えたな」
聞き流していたと聞いて不機嫌になり、口調が悪くなってしまった。
「だって別に内容なんて関係ないからね。——」
「さらっと酷いこと言うなよ?!」
突然興味ないと言われているようで僕は傷ついた。
「話に割り込んで来ないでよ」
「割り込むなって、おまえが酷いこと言うからだろ?!」
「はいはい、私が悪いから。それで話の続きをしても良い?」
「本当に酷いな?!まあ、良いけど」
軽く流され、更に傷ついた。それに僕の話には付き合う気がないようだったので、これ以上掘り返すことはしないことにした。
「それで、昨日まで好きだった人に関して熱く語っていたのに、ある日突然、1人の男子にぞっこんになって生活まで変えているんですよ?おかしいじゃないですか」
「確かに」
少しずつルキに言いたいことがわかってきた。それでもまだ少し納得してない部分はあった。
「それで私はそのルティーナが好きだった人とシンくんが同一人物だと思ったのよ。だから、あなたが異世界人だと思ったのよ」
「でも、それって僕が精神に干渉するような魔法が使えたとするなら、どうなるんだよ?人の感情なんていくらでも変えられるだろ?」
ルキはルティーナの好きな人だからという理由で僕を異世界人と決めつけていた。だから、そう聞いてみた。
「それはそれでシンくんが異世界人で確定だから」
「え?どういうこと?」
まさかの返しに混乱してしまった。それじゃあ、ルナに好かれただけで異世界人確定ということじゃないか。
「そもそもルティーナに魔法で影響を与えられる人物なんて英雄くらいしかいないからね。もしルティーナに魔法で影響を与えられるなら、その人は英雄と同レベルってことよ。そんな人物が異世界人じゃないなんてありえないでしょ?」
「えっと、もっとわかりやすく言ってもらえるかな?」
なんとなく英雄という単語が出てきたあたりでよくわからなくなってきた。そもそも英雄って、つまり僕やアイリの両親のことだよな?
「ルティーナのステータスっておかしいのよ。あの年で英雄に次いで高いんだからね。だから、そのルティーナに魔法で影響を与えるってことはルティーナよりもステータスが高いってことでしょ?つまり、ルティーナよりもステータスが高いことになるのよ」
「な、なるほど」
よくわからなかったが、ステータスがおかしいほど高い異世界人のルナよりもステータスが高くなるんだから、そいつも異世界人で確定ってことかな。
まあ、ルナに好かれた時点で異世界人ということはバレていたのか。
それって僕のしてきた苦労も無駄だったということだ。そう思うと、悲しくなってきた。
「まあ、ルティーナに精神干渉系の魔法はかけられないと思っているけどね」
「え?そうなの?」
「そうでしょ。だってルティーナのあなたに対する感情は、客観的に見たら異常よ?狂気的と言っても良いくらいだからね。そんな人が無理やり違う人を好きにさせられたら、自殺しかねないからね」
「え?!」
自殺ということを聞いて僕はかなり驚いた。
僕が驚いていると、ルキは急に近づいてきた。
「だから、ルティーナを幸せにしてあげてね」
そんなことは言われなくてもわかっている。
「やっと見つけた。シンくん?ここで女の子と2人きりで何してるの?」
僕がルキにそう言い返そうとした時、ルナがここへ来た。その声は冷たくひえきっていた。
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