第68話 理由

「まず一つ目ですが」


「はい」


僕は、ルキの言葉に相槌を打ちながら、聞いた。


「私たちの代に1人異世界人が足りないということです」


まあ、当たり前だよな。他の学年はちゃんと10人いるのに僕達の学年だけ1人少ないんだから、そう考えるのは当然だよな。アイリは飛び級しているだけで本当は1つ年下なわけだし。


「ん?えーと、それが理由ですか?」


ただ、僕にはそれが理由になるとは思えず、そう聞き返した。


「いえ、これはただ単に私達の学年にもう1人異世界人が必ずいるという確認のためだけです」


「なるほど」


僕は確認のためだけだったということに少し安心し、気持ちに余裕が持てた。


それに理由が1つ減ったということだ。それで僕は意外と理由が的外れな気がしてきた。そう思うとさらに安心することができた。


「それでは次に2つ目ですね」


「はい」


この時にはかなり気が抜けていた。どうせ的外れな理由だと決めつけ、聞き流していた。


「それはシンくんのステータスがおかしいことです」


「はい?」


少し雲行きが怪しくなった。


ステータスに関しては気をつけていたはずだから、そこを言われるとは思っていなかった。むしろステータスに関してはおかしいところはないという自信があった。


「ですから、シンくんのステータスは少し変ですよね?」


「変とは?どこかおかしいですか?」


「おかしいですかって全体的にステータスが低過ぎるんです」


「低過ぎる?」


そこには気をつけていたはずだけど、何がいけなかったのか、僕にはわからなかった。


「はい、そうです。先日のシエナとの戦闘は防御に徹していたみたいですけど、終わった後シエナは余裕がなかったのに、シンくんはまだ余裕そうでしたし、昨年のシェンとの決闘はステータスはほとんど変わらないのに、辛勝ではなく圧勝してましたよね?」


シエナとの戦闘はそこまでの根拠ではないと思うが、シェンとの決闘はそこまで意識してなかった。途中から面倒になったりして少しいい加減になってかもしれない。


やらかしたと過去を振り返っていたが、1つ気になることがあった。


「ん?でもなんでステータスが同じくらいだってわかるの?」


「それは私の選んだスキルに鑑定のレベル100があるからです!」


ルキはどこか自信に満ちた表情でそう答えていた。


「なるほどね。もう誤魔化しきれないかな」


僕はそう言ってもう誤魔化すことを諦めた。まさかシェンが原因でバレるとは思っていなかった。やっぱ、頑なに決闘を拒否していればよかったと今更後悔した。


ここまで追求されることも初めてだったこともあり、これ以上隠すのが面倒になってしまった。まあ、最悪ルナと雲隠れすれば良いと思い、あっさりと認めた。


「えぇぇ?!認めちゃうんですか!?」


ルキは何か不満なことでもあるのか、僕があっさり認めたことに驚いていた。


「その口ぶりだと認めて欲しくないように聞こえるんだけど?」


「それはそうですよ!これもなんだかんだで否定されると思ったましたから!」


「え?そうなの?」


ということは、それ以上の確信に迫る理由があるわけで、それはつまり僕が知らずのうちに重大なミスをしていたことを意味していた。


「はい!最後の理由ですが——」


「はい」


僕はどんなミスをしていたのか、ルキの答えを待っていた。


「それは、ルティーナの好きな人ということです!」


ルキは自信満々でそんなことを言ったが、僕には、2つ目の理由の方が決定的なように感じた。それほど3つ目の理由がよくわからなかった。



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