第67話 正体

僕は、ここに同じSクラスのルキがいたことに驚いていた。でもSクラスのロッカーに手紙を入れられていたことから、Sクラスの人物が入れていたことは少し考えればわかったことだった。


「シンくん、今日は来てくれてありがとう」


「あ、いえ、暇だったので気にしないでください」


まさかお礼を言われるとは思っていなかったので、変な口調になってしまった。


「それで、今日は、その、シンくんに言いたいことがありまして、少し時間大丈夫ですか?」


ルキは少し落ち着かない様子でそう聞いてきた。


「え、あ、はい。だ、大丈夫ですよ」


僕は緊張して、言葉が噛み噛みになってしまっていた。


ここに来ているんだから、時間に関しては聞く必要はないのだが、それを指摘するだけの余裕はこの時のシンにはなかった。


「……」


「……」


それから、僕とルキはお互いに黙ってしまった。


「…シンくん」


ルキがそう話し出した。


「は、はい」


僕は、緊張でおかしくなってしまいそうであった。


ルキは一呼吸おき、話しを続けた。




「シンくんって、異世界人ですよね?」




「ん?……ん!?」


僕は最初ルキの言葉を理解することができなかった。


「ですから、シンくんは異世界人ですよね?」


僕の反応がおかしかったのか、ルキはそう言いながら詰め寄ってきた。


それは、今絶対に言われることはないと思っていた言葉だったので、その言葉を理解するには少し時間がかかった。


(はいぃぃぃ?!)


僕は、それが何かを理解すると何とか驚きを表に出さず、心の中で叫ぶだけで済ますことはできた。


今までは告白されるかもという緊張だったが、今は別の意味で緊張していた。


(なんでバレてるんだよ?!)


僕は、ルキがなんでそのことを聞いてくるのか、必死に考えた。でも焦っていることは顔に出さないようにした。


(いや、まだ完全にはバレてはないはずだ。なら、誤魔化せるはず)


僕はそう考え、普段から練習していたバレた時の誤魔化し方を実践した。


まず、こういう時は否定から入るとむしろ怪しまれるはずだ。否定するということはそれが何か理解している証拠だ。だから、否定も肯定もしない方がバレないと思った。


「異世界人?ああ、お父さん、お母さんのことですか?」


僕は、そうルキが使った「異世界人」という単語を聞き返し、その単語を聞き慣れていないということを伝えた。それと同時に話題を両親に変えた。


「そう!異世界人!シンくんも異世界人ですよね?」


ルキはどこか興奮した様子でさらに詰め寄ってきた。


「ま、まあ、異世界人の子供ですから、異世界人と言えば、そうですね」


僕はルキの勢いに押され、少し言葉が詰まってしまった。


ただ、僕はそれでも必死に誤魔化した。


「あー、そうじゃなくて、えーと……」


ルキは、言葉が見つからないのか、黙ってしまった。でも、僕は上手く誤魔化せたと少し安心した。


「話がそれだけなら、僕は帰りますね」


僕はいつかボロが出ると思い、すぐこの場から離れたくてそう言った。怪しまれるが、僕が肯定しない限りは疑惑の域を出ることはないはずだ。だから、怪しまれることは覚悟の上で離れることにした。


告白されるかもとか浮かれていた頃の自分を殴ってやりたいとこの時、そう思った。


「あ、待ってください!」


ルキは僕を帰す気はないのか、引き止めてきた。


「まだ、何かあるんですか?」


すぐこの場から離れたかったが、無視するわけにもいかず、僕は離れられなかった。


「えーと、両親が異世界人だから、シンくんも異世界人ということではなくて、えーと、つまり——」


「つまり?」


「つまり……そうです!つまり、前世の記憶を持ってますよね?!」


ルキはその言葉が出てきて嬉しいのか、声が高くなっていた。


ただ、僕としてはあまり聞かれたくないことであった。それはあまり良い誤魔化しを考えていなかった。


それにここまで来ると何か確信でもあるんじゃないかと疑い始めていた。もし、何か確信があるのならこれ以上誤魔化すのは無理だし、黒歴史を増やすだけだと思い、少し諦めて理由を聞くことにした。


「なぜ、そう思うのですか?何か理由があるんですか?」


「ええ、はい、3つほどあります」


「3つぅ!?」


僕は3つもあると言われ、驚き変に語尾が上がってしまい、おかしくなってしまった。


「はい、3つあります」


ただ、それで僕も諦めることができた。まあ、理由が的外れなんてこともあるから、一応理由だけは聞くことにした。


「ちなみにどんな理由なんですか?」

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