第66話 手紙
Sクラスに入って数日が過ぎていた。
数日が過ぎているのに、未だに姿を見ていない生徒が数人いた。クラスメイトに聞いても言葉を濁すだけで、何もわからなかった。みんなから言葉を揃えて気にするなと言われた。
気にするなと言われるとむしろ気になってしまった。
そんな少し落ち着かない状況ではあるが、Sクラスの生活にも慣れてきた。
僕はもう日常となっていたロッカーに荷物を入れるため、ロッカーの前に来ていた。
ロッカーはAクラスのときにはなく、Sクラスのみにあった。このロッカーも異世界人が提案して置かれたものだ。Sクラスは人数が少ないこともあり、優先的に設置されていた。
ただ、ロッカーには基本的に何も入れていない。荷物を置きっぱなしにすることはない。これは他の人も同じで、持ってきたものを入れるだけで、その日のうちに持ち帰っている。特に使うもの無いため、ほとんどロッカーを使うことは無い。
そんなこともあり、Sクラスでほとんど実用性がないことがわかり、他のクラスには広まっていなかった。ただ、撤去するのも大変なので、そのまま放置されていた。
あれば使うが、無くても困らないという結論になっていた。
僕もロッカーはあれば便利だと思うが、Aクラスのときは使えなかったが、問題なかったため必要は無いと感じていた。
まあ、ロッカーがあれば持ち物を持ち歩くことがなくなるから、多く持ってくることもできるため、便利ではあると思う。
僕はまだロッカーを使い始めて日が浅いため、全然使いこなせていなかった。ほとんど持ち物を持ち歩くことがなかったため、今もほとんど持ち物はなかった。でもロッカーがあるのだから、使わないのはもったいと思うので、少ないが持ち物を入れるようにしていた。
ロッカーに物は何も入れてなかったから何も気にせずに僕は自分に与えられていたロッカーを開けた。
でも僕はロッカーを開けて固まってしまった。
「どうしたの?」
ルナは僕の様子がおかしいことにすぐ気づき、僕に声をかけながら、僕のロッカーの中を覗こうとしてきた。
僕は慌てて、ロッカーの中にあったモノに触れ、ステレージにしまった。
「う、ううん、何でも無いよ」
「ふーん、それなら別に良いけど」
ルナは僕のことを怪しんでいたが、詳しく問い詰めてくることはなかった。
「どうかしましたか?」
リリーが僕たちの会話を聞いて、そう聞いてきた。
「いや、別に何もないよ」
「?そうですか」
リリーは、話についてこれてないようでそれ以上は聞いてこなかった。
それから僕は、一旦落ち着けるところまで行き、ユキにストレージにしまったモノについて聞いた。
(ユキ、僕がさっきしまったモノって紙だったよな?)
『はい、そうです』
(なんか手紙のようだったけど)
『はい、手紙ですね』
僕は、そのことを聞いて少し気分が高揚していた。昨日まではなく、今日あったということから、誰かが入れたことは明白であった。それに——。
(それの手紙の内容って読めたりする?)
『はい、可能です。読み上げますか?』
(はい、お願いします)
僕は、少し興奮していたこともあり、言葉が変になっていた。
『「今日の放課後ここに来てください」と書かれてますね。それと簡易的な地図もあります』
(それってやっぱりラブレターってやつですよね?)
『おそらくそうです』
(よっしゃあああ!!)
僕は心の中でガッツポーズをしていた。
『ルナ様たちはどうするのですか?』
(うぐ、べ、別に付き合いたいとかじゃないから。でも行くけどね」
『なぜですか?』
(なぜって、ずっと待たせ続けるわけにはいかないから、振りに行くだけだよ)
最低限の礼儀として、無視するのは良くないと思った。まあ、ラブレターを貰ったことがないから、何が正しいのかわからなかった。
『振りに行くと言っているわりには嬉しそうですね』
(それは僕は生まれてから一度もラブレターというモノをもらったことがなかったため、単純に嬉しかっただけだ。だから、反射的に喜んでしまっただけだよ。決してやましい気持ちがあるわけではない)
『ふーん。そうですか』
ユキは僕の言うことを信用してないようだった。
それからの授業の内容は全く頭に入ってこなかった。ただただ放課後が楽しみであった。
放課後になると僕は、ルナとリリーとアイリに「用事ができたから先に帰っていて良いよ」と伝えて目的の場所へ向かった。
ただ、3人とも僕の行動を怪しんでいたようで、しつこく用事の内容を聞いてきた。振り切ろうとしてもどこまでも追って来そうだったため、僕はさっさとテレポートを使い、目的の場所へ移動した。
移動すると、そこにはすでに誰かが来ていた。僕はちょうど良くその人の後ろにテレポートしていた。
「あの、この手紙をくれたのは君?」
僕はそこにいた人の後ろからそう聞いた。
その人は振り返り、僕と僕の持つ手紙を確認すると。
「はい!そうです」
そこにいた人物、ルキはそう答えた。
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