第58話 説明

「えっと、とりあえず、彼のことは気にしないで。というか、ないものとしておいて」


「————!?」


やはり不服なのか、また暴れ出した。ただ、決闘挑んでくる男ということがわかり、僕は心配する必要はないと思い、無視することに決めた。


「あなたたちには知っておいてもらいたいことがあるから、しっかり聞いておいてね」


「「はい!」」


僕とリリーは真面目な話だと思い、頭を切り替えて、聞き逃さないようにしようと姿勢を正した。


「まず、このSクラスは他のクラスとは違って決められた授業はないのよ。だから基本的に何をしても良いから好きなことをして良いよ」


「基本的?」


僕はその言葉が気になり、そう聞き返した。


「ええ、そうなのよ、「基本的」に何をしても良かったのよ。でもルティーナが下位のクラスに行ったことで少し変わったのよ「戦闘に関することを最低限やる」ということに。まあ、戦闘に関することをしていれば、今でも何をしていても良いんだけどね」


なるほど、ルナが原因でそんなことになっていたのか。


でもそれって間接的に僕が原因なんじゃ?


そう思うと急に申し訳なくなってきた。


「すみませんでしたっ!」


と、僕は勢い良く土下座をしながら謝った。


「え?いやいや!シンが謝るようなことじゃないから!それはルティーナがすることであってシンがすることじゃないよ!」


シエナは、僕が土下座で謝っていることに驚き、慌てていた。


シエナは僕が謝る必要がないというが、それは、僕とルナの関係がわからないから、ルナが勝手にやったことだと思うからであり、それを知っている僕からすれば、申し訳なかった。



しばらくは、そのまま謝り続けた。


ただ、謝り続けていてもあまり良い印象を与えないと思い、適当なところでやめた。途中から、アイリやリリー、ルナまで止めに入ってきたためだ。


「もう大丈夫かな?」


「はい、話を止めてしまいすみません」


「いえ、もう謝らないでください」


「…はい」


また謝ろうとしたが、それは堪えてそう答えた。


「えーと、どこまで話しましたっけ?」


「まだ、授業のことだけだよ」


パクトがシエナの質問に対して即座にそう返した。


「ああ、そうだった。だから次は、講師についてだね」


「こうし?」


僕は、何故そんな話になるのかわからず、そう聞き返した。普通なら、講義とか講演とかそんな表現をすると思ったからだ。


「ええ、そうよ。私たちSクラスの生徒は異世界人しかいないから、私たちに教えられる人がいないのよ。だから私たちがSクラスの生徒同士で教えあっているのよ。それに向こうの知識とかを広めることもしてるのよ。やっぱり生活が豊かになった方が良いでしょ?」


「確かに。でもそれってやっぱり僕たちもやらないといけないんですか?」


「いえ、あなたたちにはやってもらうつもりはありません。異世界人の中にも若くしてこちらに来た人もいますから、専門的なことを知らない人もいます。無理してやることでもないので、できない人に強要することはありません」


そのことを聞いて安心した。異世界人ということを隠しているため、何かを教えようとすると日本のことなどうっかり言ってしまうことがあったからだ。


「ですが、違うことはやってもらいます」


僕の心を読んでか、シエナは怖いことを言い出した。


「ち、違うこと?」


安心しているところに、不安になることを言われ、言葉が詰まってしまった。


「そんな不安になることはないですよ。やってもらいたいのは、訓練の仕方などを共有してもらいたいのです」


「訓練?」


「はい、そうです。知識も必要ですが、力をつけることも重要です。なので、強い人からどうやって強くなったかを教えてもらい、力をつけていくのです」


「なるほど」


「まあ、こちらも無理をする必要はないから」


それはそれで良かった。でも何もしないというのも嫌だった。


「でも、あなたには戦闘の方はやってもらいたいのよ」


「え?なんで?」


なんか、今までの展開を全て覆す言葉に俺は驚いた。


「なんでって、シェンにあなたは勝っているんだから、当然でしょ?シェンはこのクラスでもルティーナを抜かせば4番目に強いんだし、あなたには実力があることは証明されてるのよ」


「わ、わかりました」


なんとなく、拒否することはできそうになく、そう答えた。


「そう、ありがと。それとよろしくね」

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