第57話 不審物?
「えーと、そろそろ良いかしら?」
シエナはずっと抱きついたままのルナとルキに対してそう言った。
「あ、ごめんなさい」
そう言ってルキはルナから離れた。ようやく解放されたルナはどこか安心しているように見えた。
「私たちの自己紹介は終わったから、次はあなたたちの番ね」
「あ、はい。えーと、僕は、シン・サトウと言います。よろしくお願いします」
何を言えば良いかわからなかったので、とりあえず名前だけにしておいた。
「私はリリーナと言います。シン様、アイリ様の世話を主にしています」
リリーも僕同様に、簡単なことしか言わなかった。でも僕はよりはしっかりと挨拶をしているように聞こえた。
「えっと、まあ、それくらいで良いか。それじゃあ、改めて、よろしくね」
シエナは僕たちの自己紹介が何か物足りないように感じていたようだが、そこには触れず、そのまま自己紹介は終わった。
僕はどうしても気になることがあり、思い切って聞いてみたいことがあった。
「あの、一つ聞いても良いですか?」
僕は、シエナにそう聞いた。
「うん、いいよ。なんでも聞いてよ。それと、そんな堅苦しくなくて良いよ」
「それは、もう少し打ち解けてからでお願いします。あの、それで、アレは何ですか?」
僕は目の前に見えている、ナニかを指差してそう聞いた。見たまま言うと、細長い物体で人の背丈ほどあった。それは、なぜか椅子に座っており、さっきからずっと見ているとたまに動いていた。ナニか動くモノだと思うが縄で簀巻きにされているようで、何かはわからなかった。
「えーと、アレは気にしないで。というか、気にしない方が良いよ」
「————!」
シエナがそう言う、それが不服なのか、そのナニかは椅子の上で座ったまま暴れ出した。何か言っているようだが、聞き取ることはできなかった。椅子の上だったためか、バランスが取れず、そのナニかはそのまま床に落ちてしまった。落ちた後しばらく動かなかったが、その後そのナニかは思い出したかのようにまた暴れ出した。
「アレを気にしないのは、さすがに無理だと思うのですが」
僕がそう言うとその光景を同じく初めてみたリリーも怯えながら、コクコクと頷いていた。他の人を見るといつものことなのか、気にしていないように見えた。ルナも見たことがあるのか、汚物を見るような蔑んだ目でそのナニかを見ていた。
「そうですよね。気にしないなんて無理ですよね」
シエナはどこか諦めたようにそう言った。
「アレは、私たちと同じSクラスのシェン・リボシキルよ。まあ、かなり問題を起こすからああやって拘束しておかないと何をするかわからないのよ。今日もシン、あなたに不意打ちをして勝つなんて言っていたくらいだし」
どこかで聞いたことのある名前だと思い出そうとしたら、不意打ちという単語を聞いたところで、僕に決闘を挑んでくるSクラスの人ということがわかった。
拘束にしてはやり過ぎな気もするが、不意打ちすると公言しているなら、それくらいされても仕方ないとも思った。まあ、あいつの攻撃なら不意打ちされたところで大したことないので、気にすることでもないけど。
「あの、えーと、ありがとうございます?」
どう答えて良いかわからず、疑問形になってしまった。
「お礼を言われるようなことじゃないわ。これなんて普段のことだし」
普段からのことのようだが、そんな人と同じクラスというのはなんだか嫌だと思った。
僕はこの男に気をとられていたため、僕のことをずっと観察している人物の視線に気づくことができなかった。
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