第44話 周りの視線

リリーは部屋から出てきてくれた。ただなんで出てきたかはわからない。


リリーが部屋から出てきたところまでは良かった。でもその後が悪かった。


今までは腕に抱きついたりしてこなかったのに、部屋から出てきたその日にそんなことをしてきたのだ。しかもそれを見ていたルナが負けじと反対の腕に抱きついてくる始末。


そのせいで僕の精神はゴリゴリと削られていってる。


しかしだ、懸念していたロゼさんからは、特に何もなかった。というか、今までにないくらい、いい笑顔だった。やっぱりその理由もよくわからなかった。


結論、女はわからない。


そんなことで今は朝食を食べているんだけど、両サイドが埋まっていて食べられない。


「あのー、お二人さん?食べられないんだけど?」


「シン君はそんなこと気にしなくても大丈夫。私が食べさせてあげるから」


「そうだよ。シン様はそのまま座ってるだけで大丈夫だから」


「おまえたちなぁ。そんなことしないでくれ!僕は自分でできるから!それにこの体勢はちょっと……」


最後の言葉は小声で言ったはずなのに2人には聞こえていたらしく、体をさらに押し付けてきた。


まあ、そんなこんなで、朝から僕の精神は削られまくった。食べる時も、あーん、させられ、今も顔が熱い。それにあんなことをしたのに自分達も真っ赤になっているのだ。ほんと意味がわからない。


それに懲りたらもうやらないでほしいんだけど、学校に行くときも2人が両サイドに立ち、腕を組んできた。でも僕に拒否権はない。まあ、嬉しいからこのままでいいっていうのは確かだけど。


そしてこんな格好をしているから、学校に近づけば、注目されるわけでして。


なんか周りの視線が痛い。特に男子。そんな親の仇を見るような目で見るなよ。


僕が何をしたって言うんだ!


僕は何もしてないぞ!してるのはこいつらだからな!


とかって言っても、火に油を注ぐようなものだから言わないけど。


まあ、そんなわけで周りのことは一切無視、気にしないようにして、歩いていた。まあ、腕を組んで歩いているから、歩きづらさはある。これが一人だったら少しは楽だし、こんなに注目を集めることもなかったのに。


周りを気にしないで歩いていたら。


「おい、おまえ、止まれ!」


そう言い、僕達の目の前に現れた人物がいた。


身なりは整っていて、僕よりも背が高いから、年上でさらに貴族だと思う。


さすがにこれだと無視することもできないから、大人しく従っておく。


「はい、なんでしょうか?」


「おまえは何をしてるのか、わかっているのか?!」


「?」


「その顔はわかってないようだな!それなら教えてあげるよ!」


いや、別そういうのはいいから。それになんかめんどくさいことに巻き込まれそうだし。まあ、そんなこと言わないけど。


「君は、今や全男子生徒の敵だ!だからここで終わらせてやろう!俺と決闘しろ!」


うわっ、やっぱりめんどうくさいやつだ。しかもこれって前にやった決闘が原因だよな。


「嫌だ」


まあ、僕の答えは決まっているけど。こんなのに関わるだけ損。

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